皆さんはタカクラタツという魚をご存知でしょうか?
タカクラタツは20cm以上に成長することがある、タツノオトシゴの仲間ではとても大きくなる種類です。
今回は、そんなタカクラタツの生態や特徴についてご紹介いたします。
タカクラタツの基本情報
学名 | Hippocampus trimaculatus |
英名 | Longnose Seahorse |
分類 | トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属 |
分布・生息域 | 青森以南の太平洋側と山口以南の日本海側、東部インド洋、西部太平洋 |
大きさ | 17~22cm程 |
タカクラタツは一般的に食用魚として利用されることはありませんが、中国では漢方薬として珍重されることから、各地で乱獲され、個体数が減少しています。
そのため、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストではタカクラタツを危急種としています。
分類
タカクラタツ(Hippocampus trimaculatus)はトゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属する海水魚です。
トゲウオ目は世界の海域だけでなく、汽水域、淡水域にも進出していて、一般的な魚類とはかけ離れた独特な体型を持つグループです。
これまでに270種以上が知られていて、そのうちの大半である230種以上がヨウジウオ科に属しています。
多くの種が一般にイメージされる魚らしからぬ特異な姿と多様な色彩を持っていて、その代表格がタツノオトシゴ属です。
特徴
タカクラタツの体長は17~22cm程度です。
体型は側扁していて腹部が突出し、頭部と胴体がほぼ直角で、尾鰭が存在していないのが特徴。
鱗が変化した環状の硬い甲板が全身を覆っていて、前へ突き出た管状の吻の先に小さな口が開いています。
典型的なタツノオトシゴ属の姿ですが、後頭部の冠状の突起が不明瞭で、顎の棘が後ろ向きなところが独特です。
タカクラタツの体色は淡い褐色から黒色まで、個体差が大きいのですが、背部に3つの黒色の斑点が見られます。
同属でよく似たオオウミウマやクロウミウマは、頭部の突起が明瞭で、顎の棘が下向きなことから区別できます。
生態
タカクラタツは東部インド洋から西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に分布している魚で、西はインドから東はフランス領ポリネシアまで、北は南日本から南はオーストラリアまでで知られています。
日本国内では青森県以南の太平洋側と山口県以南の日本海側から琉球列島にかけてで見られます。
タカクラタツは水深0~100mまでで知られていますが、通常は20m以浅の海域に生息していて、沿岸の岩礁や、藻場の発達した砂泥底を好みます。
またマングローブ林が広がるような汽水域でも見られる魚です。
餌はごく小さな魚や、甲殻類などの動物プランクトンで、流されないように尾を海藻へ巻きつけて体を固定する習性を持ちます。
繁殖については、日本近海では5~6月に繁殖期を迎えることが知られていて、雌は雄が持つ育児嚢に産卵し、雄は孵化するまで卵を保護します。
見たい時は?
ユーモラスな姿からタカクラタツは観賞魚としても人気があり、アクアリストの間で飼育されることがあります。
タカクラタツは水族館でも飼育展示が行われていて、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、長崎ペンギン水族館、須磨海浜水族園、志摩マリンランド、鴨川シーワールドなど、全国の9ヶ所の水族館で飼育されています。
最後に
独特のフォルムがとてもユニークなタカクラタツですが、漢方薬目的の乱獲が横行して、急速に海から姿を消しつつあるタカクラタツ。
この魅力的な姿をした生物が地球上から絶滅するのを防ぐためにも、まずは私たちがタカクラタツという魚を知ることが必要でしょう。