皆さんはテングダイという魚をご存知でしょうか?
テングダイは大きな鰭と綺麗な縞模様を持つ、まるでアマゾン川水系原産の熱帯魚エンゼルフィッシュを思わせるような姿をした不思議な魚で、スキューバダイビングでは人気の高い魚です。
今回は、そんなテングダイの生態や特徴についてご紹介いたします。
テングダイの基本情報
学名 | Evistias acutirostris |
英名 | Striped boarfish |
分類 | スズキ目カワビシャ科テングダイ属 |
分布・生息域 | 相模湾以南、中・西部太平洋 |
大きさ | 50cmほど |
分類
テングダイ(Evistias acutirostris)はスズキ目カワビシャ科テングダイ属に属する海水魚です。
カワビシャ科はインド洋と西部太平洋及び大西洋南西部に分布する仲間で、頭部の骨が露出するという特徴があります。
これまでに7属13種ほどが知られているだけの小さなグループで、日本近海ではテングダイの他、カワビシャ、ツボダイ、クサカリツボダイの3属4種が見られます。
特徴
テングダイの体長は通常50cmほどですが、最大90cmの個体の記録が報告されています。
体型は強く側扁していて左右に平べったく、体高がとても高いのが特徴。
背鰭が大きく発達する上、吻が突き出していて口が小さく、その様がまるで天狗のようであることから、テングダイの和名の由来となっています。
また、下顎には短い髭も生えています。
テングダイの体色は黄色みを帯びた白色で、6本の黒色の横帯があり、はっきりとした縞模様になっています。
腹鰭は黒くなりますが、それ以外の鰭は鮮やかな黄色をしています。
幼魚の体色は灰色で、横帯ではなく細い雲状の班が全身に散在していて、成魚とはかなり異なる外見と言えるでしょう。
生態
テングダイは中・西部太平洋に分布している魚で、日本近海、ハワイ諸島、オーストラリア南東部、ロードハウ島、ノーフォーク島、ニュージーランド北部で知られていますが、赤道付近では見つかっておらず、奇妙な分布域を示しています。
国内では相模湾から九州にかけての沿岸、伊豆諸島、小笠原諸島で見られます。
沖縄でも見つかっていますが、数は少ないようです。
テングダイは水深40~250mのやや深い岩礁に生息しており、単独で泳ぐか、小さな群れを作ります。
同じカワビシャ科のカワビシャは水深100~200mの砂底を好むのに対し、テングダイはそれより浅い岩礁で暮らします。
テングダイは肉食性で、ウミシダの仲間やクモヒトデの仲間といった棘皮動物を好んで捕食することが知られています。
食べられる?
テングダイは刺網や定置網、底曳網など様々な漁法で漁獲され、食用魚として市場にも流通する魚です。
ただし、大きな群れを作らないためか、まとまって獲れることはありません。
臭みのない上質な白身は高い評価を受け、刺身や塩焼き、煮つけなどに用いられますが、漁獲量の少なさから高値が付けられがちです。
見れる水族館は?
特異な外見と綺麗な縞模様を持つテングダイは、観賞魚になりうる魅力も持ち合わせていますが、大型に成長する上にやや深海性であるために飼育は難しく、個人で飼育しているアクアリストはほとんどいません。
ただし、水族館では飼育展示されることがあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年12月時点で、テングダイは長崎ペンギン水族館、名古屋港水族館、のとじま臨海公園水族館、東京都葛西臨海水族園など、全国の9ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
比較的地味な魚が多い日本本土沿岸の温帯海域にあって、鮮やかな縞模様と大きな背鰭によって、突出した存在感を見せつけるのがテングダイです。
その変わった見た目もさることながら、なぜか北半球の日本周辺と、南半球のニュージーランド周辺に隔離した分布を持っていて、好物はクモヒトデ類やウミシダ類というのだから、興味が尽きません。
そんな不思議だらけのテングダイ、飼育展示している水族館はやや少なめですが、足を運ぶ機会がありましたら、一度じっくりと観察してみてはいかがでしょうか?