トラフカラッパ　～大きさや特徴、生態について

皆さんはトラフカラッパという生物をご存知でしょうか？

トラフカラッパは日本近海の浅い海に生息しているカニです。

その和名自体が聞き慣れない名前ですが、それとは別に「ハズカシガニ」というおかしな地方名も持ち合わせています。

カラッパとはどういう意味なのか？そして何が恥ずかしいのか？

今回は、そんなトラフカラッパの生態や特徴についてご紹介いたします。

トラフカラッパの基本情報

分類

トラフカラッパ(Calappa lophos)は節足動物門軟甲綱十脚目カラッパ科カラッパ属に属する海洋生物で、カニの一種です。

カラッパ属は饅頭のような球状の体を持ち、頑丈で大きな鋏を持つグループで、これまでに40種以上が発見されている他、化石記録から多数の絶滅種の存在も確認されています。

ちなみに「カラッパ」とは、インドネシア語で椰子の実のことを「kelapa(クラパ)」と言い、それが転訛したものです。

カラッパ属のカニの丸っこい体が椰子の実にたとえられたのです。

特徴

トラフカラッパの甲羅の幅は8～12cm程度です。

その甲羅は球状に盛り上がっていて、後縁がひさし状に張り出しているのが特徴。

ただし甲羅の表面はすべすべとしていて滑らか。

トラフカラッパの大きな鋏は極端に幅広く、頑丈で甲羅の前面を覆うことができる一方、4対の歩脚は小さい上に、普段は甲羅の下に畳み込まれていてほとんど見ることができません。

ちなみにこの鋏で甲羅の前面を覆い隠す仕草が、人間が顔を隠して恥ずかしがる姿にたとえられて、ハズカシガニという地方名が生まれました。

トラフカラッパの体色は、淡い黄色か褐色で、中には赤みを帯びた個体もいます。

そして、甲羅に暗褐色の虎のような斑紋がたくさん点在しているのが特徴。

その模様が虎斑(トラフ)のようだということで、和名に冠されることになりました。

生態

トラフカラッパはインド洋から西部太平洋の熱帯・亜熱帯海域に分布しているカニで、東南アジアを中心に、西はスリランカまで、北は南日本、南はオーストラリア沿岸部までで知られています。

日本国内では東京湾以南で見られます。

トラフカラッパが生息するのは水深10～200mの海域で、通常は浅い海の砂泥底にいますが、沖縄本島周辺では水深150～200mの深い海底から採集されています。

トラフカラッパは昼間は砂の中に潜ったまま動かず、目と触角だけを出して隠れています。そして夜になると餌を求めて動き出すのです。

餌としては、主に巻貝やヤドカリを好んで捕食します。

この捕食の際に特徴的な大きな鋏が真価を発揮するのです。

まず左の鋏で巻貝を掴んで逃げられないようにすると、右の鋏にある突起部を使って、まるで缶切りのように貝殻の縁を切り削ってゆき、露出した中身の軟体部、あるいは貝殻を利用していたヤドカリを食べてしまうのです。

観たい時は？

トラフカラッパはカニの仲間ですが、単独で行動しているためにまとまって漁獲されることもなく、また歩脚の小ささから可食部が少ないことも相まって、通常は食用に利用されることはありません。

しかし、そのユニークな姿形と行動から、鑑賞生物としては人気が高く、アクアリストの間では飼育されることもあるカニです。

ただし、トラフカラッパのような甲殻類の飼育に当たっては、水のpH管理が難しく、飼育は簡単ではありません。

トラフカラッパは水族館でも飼育展示されており、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、かごしま水族館、マリンワールド海の中道、NIFREL(ニフレル)、鴨川シーワールドなど、全国の13ヶ所の水族館で飼育されています。

まとめ

トラフカラッパは不思議な名前とおかしな地方名を持つだけでなく、とてもユニークな姿形をし、とても面白い行動を見せてくれるカニです。

カラッパ属には同じように面白いカニが何種も存在しています。

個人での飼育は難しいかも知れませんが、カラッパ属を飼育している水族館は少なくないので、一度その面白い行動を観察しに行ってみてはいかがでしょうか？