皆さんはノコギリダイという魚をご存知でしょうか?
日本本土ではあまり馴染みのない魚なのですが、沖縄では一般的な食用魚として食卓で目にする機会も多い魚です。
ノコギリダイは漢字で書くと「鋸鯛」となりますが、なぜこのような名がつけられたのでしょうか?
今回は、そんなノコギリダイの特徴や由来、生態について、ご紹介いたします。
ノコギリダイの基本情報
学名 | Gnathodentex aureolineatus |
英名 | Striped large-eye bream |
分類 | スズキ目フエフキダイ科ノコギリダイ属 |
分布・生息域 | 房総半島以南、インド洋、西部太平洋の熱帯海域 |
大きさ | 20~30cm程 |
分類
ノコギリダイ(Gnathodentex aureolineatus)はスズキ目フエフキダイ科ノコギリダイ属の海水魚です。
フエフキダイ科は5属39種が記載されていますが、大西洋に分布するフエフキダイ属のLethrinus atlanticus(和名なし)1種を除く、大半の種がインド洋から西部太平洋にかけて分布しています。
その中で、ノコギリダイ属を構成するのはノコギリダイ1種のみです。
フエフキダイ科はタイ科と系統上近い姉妹群に位置づけられており、ノコギリダイはマダイとも近い仲間と言えます。
特徴
ノコギリダイの体長は通常は20cm程度、最大で30cmに達します。
左右に平たく側扁した、いわゆる鯛型の体型を持っており、目が大きいのが特徴。
外からは分かりにくいのですが、主上顎骨の側面に鋸歯状の突起があり、これがノコギリダイ(鋸鯛)の和名の由来になっています。
体色は全体として銀白色ですが、背部が黄色みを帯び、体側面にも数本の黄色い縦帯が走ります。
それでいて各鰭は赤みを帯びる、美しい魚です。
ただし、夜になりと体色が暗くなる変化が起こり、天敵の目につきにくくなります。
生態
ノコギリダイはインド洋から西部太平洋にかけての熱帯海域に広く分布しています。
日本では房総半島以南の太平洋側、九州沿岸、琉球列島や小笠原諸島で見られます。
沿岸の水深30mまでの浅い岩礁やサンゴ礁に群れを作りながら生息しています。
群れは大きく、100匹を超える大群が観察されたこともありますが、夜になると単独行動に移り、それぞれが岩陰やサンゴの根元などでバラバラに眠るという習性を持ちます。
幼魚はごく浅い場所にも現れ、潮だまりに迷い込むことがあります。
餌はエビやカニなどの甲殻類や小型の魚類で、肉食性です。
繁殖の時期や方法については、あまりよく分かっていませんが、同じフエフキダイ科のハマフエフキの産卵期は、沖縄において2~11月と長期間に渡ることが知られています。
食用魚?観賞魚?
ノコギリダイは刺し網や釣りなどで漁獲され、熱帯地方では食用魚として広く流通しています。
日本でも沖縄では「ムチグヮー」「ムチヌイユ」といった呼び名があり、餅を意味する「ムチ」が入っていることから、粘り気のある白身の食感が評価されていることが分かります。
一方で日本本土ではあまり流通することがなく、食用魚としての評価が定まっていないようで、値段も低いままです。
観賞魚としては、銀色の輝きが強くて綺麗なことから、特に幼魚がよく飼育されます。
水族館においては、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年現在で沖縄美ら海水族館、海遊館、鳥羽水族館、東京都葛西臨海水族園など、全国の14ヶ所の水族館で飼育展示されており、珍しくない魚であることが分かります。
まとめ
ノコギリダイは、スズキ目フエフキダイ科ノコギリダイ属の海水魚です。
ノコギリダイという不思議な名前の魚は、体の一部の特徴に由来することが分かりました。
そんなノコギリダイは水中では銀色の輝きを帯びた、とても綺麗な魚であると共に、食べても美味しいという、人間にとって二重に値打ちのある魚です。
水族館の水槽で優雅に泳ぐ姿を見つけるのか、あるいは食卓で美味しく調理された姿を目にすることになるのか、どちらになるかは分かりませんが、もしノコギリダイに出会うチャンスがあれば、その出会いを楽しんでください。