皆さんはサクラダイという魚をご存知でしょうか?
春に獲られたマダイのことを桜鯛と雅称で呼ぶことがありますが、ここで紹介するのは標準和名としてサクラダイの名を持つ魚で、マダイとは異なります。
食卓で目にする機会もなく、一般的に知名度が低いサクラダイですが、実は海外の水族館やアクアリストからは、日本を代表する魚と称されることもあります。
今回は、そんなサクラダイの生態や特徴についてご紹介いたします。
サクラダイの基本情報
学名 | Sacura margaritacea |
英名 | Cherry anthias |
分類 | スズキ目ハタ科サクラダイ属 |
分布・生息域 | 南日本(琉球列島以外)、台湾、パラオ |
大きさ | 15cm程 |
分類
サクラダイ(Sacura margaritacea)はスズキ目ハタ科サクラダイ属の海水魚です。
ちなみに桜鯛ことマダイは、同じスズキ目でもタイ科マダイ属で、分類上は少し離れています。
サクラダイが属するハタ科には、高級食用魚として有名なクエやキジハタがいます。
大きくていかつい面相のクエは、小さくて華やかな色彩のサクラダイとは似ても似つかない魚ですが、実は同じグループなのです。
特徴
サクラダイの体長は15cm程度です。
左右に平たく側扁した体型で尾鰭が深く湾入し、よく発達した背鰭は第3棘が長く伸びるのが特徴。
雌性先熟の魚として知られていて、雌雄で体色や模様が異なります。
雌の体色は橙色で、背鰭の付け根付近に一対の黒い斑紋を持ちます。
一方の雄の体色は鮮やかな赤色で、白い斑紋が点在し、何とも美しい姿をしています。
この体色の大きな違いから、かつて雌は別種として扱われ、オウゴンサクラダイと呼ばれたことがありました。
雌から雄への性転換が行われる時期には、両者の中間的な外見を持つ個体も現れます。
生態
サクラダイは主に南日本沿岸に分布することから、かつては日本の固有種と考えられたこともありましたが、近年になって台湾やパラオからも生息が報告されています。
ただ、ほぼ日本近海特有の魚と見てもよいでしょう。
相模湾以南の太平洋側と、兵庫県以南の日本海側で見られますが、琉球列島では見られない魚です。
サクラダイは沿岸の岩礁域で、水深20~50mのやや深場に生息します。
大きな群れを作り、同じハナダイの仲間や、生息環境が似通るメバル類やイサキなどと、混群を形成することもあります。
遊泳性が強く、餌は海中を漂う動物プランクトンや、小型の甲殻類など。
雌性先熟の性転換を行うサクラダイは毎年秋になると、雄1匹に対して数匹の雌がつく繁殖グループを作って産卵を行います。
食べられる?
サクラダイは小さすぎる上、一度にたくさん獲れるような魚でもないため、食用魚としてほとんど認知されていません。
漁獲されることがあっても市場に流通することはなく、蒲鉾の原料に使われるようです。
桜鯛と呼ばれる春先のマダイは釣り人の憧れの的ですが、サクラダイそのものはたまに釣り上げられても外道扱いされてしまいます。
ただし、身の量は少ないながら味自体は悪くないようで、さすがは多くの高級魚が属するハタ科の一員と言えるでしょう。
見たい時は?
一方、観賞魚としてのサクラダイはその美しい姿からとても人気があります。
主に日本近海でしか見られない魚であるため、海外の水族館やアクアリストから、日本を代表する魚として人気が高く、飼育されることが多い魚です。
当然水族館で飼育展示されることも多く、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年現在、南は沖縄美ら海水族館から北は北海道のサンピアザ水族館まで、28ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
サクラダイは、スズキ目ハタ科サクラダイ属の海水魚です。
サクラダイの学名Sacura margaritaceaのうち、Sacuraはそのまま日本語の桜で、margaritaceaは真珠を意味します。
これほど優雅で、かつ日本を代表するような名前を持つ魚は他にいません。
マダイの桜鯛の美味しさに舌鼓を打つのもよいでしょうが、水族館などで美しい姿で泳ぐサクラダイも一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?