今回は、アカハタの生態や特徴、食べる際の注意点についてご紹介させていただきます。
アカハタの基本情報
学名 | Epinephelus fasciatus |
英名 | Blacktip grouper |
分類 | スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属 |
分布・生息域 | 相模湾、西部太平洋、インド洋 |
大きさ | 30cm程 |
スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属の海水魚です。
赤みを帯びた華やかなボディーカラーが目を引きます。
刺網・釣り・潜水等で漁獲されていて、食用魚としては赤く丁度良いサイズ感で中華料理の蒸し物「清蒸(チンジョン)」で使用する事が広く知られています。
アカハタが生息する海域
西部太平洋~インド洋等の熱帯の海域に広く分布しています。
日本では伊豆諸島・相模湾より南の太平洋側・琉球列島・小笠原諸島等温かい海に生息しています。
アカハタの生態
成魚は普通水深が160mより浅いサンゴ礁・岩礁に単独で暮らしています。
幼魚時代は海の表層で浮遊生活をして、その頃の背ビレと腹ビレに有る棘は長く伸びていますが、3cm程に体長が成長すると徐々に海の底で暮らすようになり長い棘も短くなっていきます。
肉食性で小魚・エビ蟹等の甲殻類・イカタコ等の頭足類を捕食します。
アカハタは生まれた時は皆メスで、体が大きく成長したらオスに性転換する雌性先熟のお魚です。
メスの平均的な体長は約27cm・オスの平均的な体長は約32cmです。
生後2年~3年で成熟し繁殖が可能になります。
産卵シーズンは主に夏で、小笠原の水産センター水槽内で育った成魚は、産卵に最適な水の温度と栄養豊富な環境な為、ほぼ一年中産卵することが可能だと言われています。
アカハタの身体的特徴
アカハタの成魚は体長約20cm~40cm程です。
体型は楕円形で平べったい体つきをしています。
口は大きく唇がぽってりしていて下顎が上顎よりも突き出ています。
背ビレと尾びれの後方縁は緩やかなカーブを描いています。
背ビレの上側にはくっきりと黒い縁取りが有ります。
姿が似ている「アカハタモドキ」との区別はこの部分で出来ます。
体色は全体的に華やかな朱赤~オレンジがかった赤色で、淡色の幅の広いストライプ模様が5本、体の側面に浮き上がります。
その上に絵筆で付けたような不規則な大きさの白いドット模様が出る個体もいます。
アカハタのボディーカラーは住んでいる環境により白っぽくなったり暗くなったりと色合いを変化させます。
食用としても人気上昇中
以前は、クエやアラなど高級魚が名を連ねるハタ科の魚の中では、アカハタの身は脂がのりにくくさっぱりしている為余り評価が高く無く、珍重されているハタ科の中では安価な部類の普通魚と言った扱いでした。
専ら赤い魚を好む中華料理での蒸し物や、ムニエル等火を通す調理法で洋食で用いられていました。
しかし、最近ではお造りにしたり寿司ネタにしたりと生で食する調理法で用いられるようになり、その評価と市場価格がぐんぐん上がって来ているお魚です。
その事から、アカハタの市場での需要が多くなったものの近年個体数が減少しているので、漁獲される小笠原海域では水産センターで育てた稚魚を放流する活動をしています。
生食するときは寄生虫に注意!
アカハタの身はサッパリとした上品な白身が特徴のお魚です。
最近では生き締めした新鮮な物を生食し親しまれるようになりました。
魚の生食と言えば気になる寄生虫・食中毒ですね。
残念な事にアカハタにも「アニサキス」が寄生している可能性が有るので注意しましょう。
アニサキスは、食中毒を起こす寄生虫(主にサバのお刺身等)としてとても有名な線虫の一種です。
悪さをするのはその幼虫で体長2cm~3cm幅は0.5㎜~1㎜程の白い糸ミミズの様な姿をしています。
このアニサキスの幼虫は魚が生きている間は内臓等に寄生していて、魚の死後時間が経過する毎に徐々に筋肉(身の方)へ移動する事が確認されています。
・急性胃アニサキス症:食後数時間~10時間経過したころに激しいみぞおち痛・吐き気等に見舞われます。
・急性腸アニサキス症:食後10数時間~数日経ってからは激しい腹痛を伴った腹膜炎をおこします。
アニサキス症では急性胃アニサキス症が主です。
胃壁や腸壁にアニサキスの幼虫が食い込む事で症状を自覚します。
治療法:内視鏡のピンセットでアニサキス幼虫を捕獲すればあっという間に激しい腹痛が治まります。
予防法は?
厚生労働省のガイドラインでもアニサキス症の予防には
・「鮮度徹底」「目視」「冷凍」「加熱」
の4つをあげています。
まずは身の中にアニサキスの幼虫が潜んでいないか、しっかり目で確認し見つけたらピンセットなどで捕獲します。
そして冷凍はアニサキスには有効な手段です。
よく塩で締める・酢で締める調理法が有りますが、これらの方法はアニサキス幼虫には効かないので注意しましょう。
アカハタの生食をする際にはこれらの処理をキチンとして安全に食べる事をお勧めします。
それでもアニサキスが心配な場合は、やはり加熱をしっかりして食べるのが一番ですね。
まとめ
アカハタは以前はハタ科のわりに美味しくない魚と汚名?を着せられていた海水魚ですが、近年輸送の素早さで新鮮な物が手に入り生食するようになりました。
魚の新たな魅力を発掘して価値を高めるのはとても素晴らしい事ですね。
でもお刺身を食べてお腹が痛くなったら速やかに病院へ行きましょう。
我慢して正露丸を飲めば効くと言う人もいますがそれでは効きません。
私の知り合いがアニサキス症で一晩中苦しんで翌朝病院へ駆け込んだことが有りました。
お腹が痛くなった当日夕方の時点で病院へ行けば、もっと楽だったのにと漏らしていたのを思い出しました。