皆さんはキルトカラ・モーリーという魚をご存知でしょうか?
キルトカラ・モーリーはアフリカのマラウィ湖に生息するとても美しい青い魚でユニークな口内保育の習性で知られています。
今回は、そんなキルトカラ・モーリーの特徴や生態についてご紹介いたします。
キルトカラ・モーリーの基本情報
学名 | Cyrtocara moorii |
英名 | hump-head cichlid / blue dolphin cichlid |
分類 | スズキ目カワスズメ(シクリッド)科キルトカラ属 |
分布・生息域 | マラウィ湖 |
大きさ | 20cm程 |
分類
キルトカラ・モーリー(Cyrtocara moorii)はスズキ目カワスズメ(シクリッド)科キルトカラ属に属する淡水魚です。
カワスズメ科は南アジアから中東、マダガスカル島を含むアフリカ大陸、中米から南米にかけて分布している淡水・汽水魚のグループで、これまでに1,300種以上が知られています。
水産上重要な位置づけを持つナイルティラピアや、観賞魚として人気の高いディスカスなど、様々な形態を持つ魚がこの科に含まれていて、特にアフリカのビクトリア湖、タンガニーカ湖、マラウィ湖の3つの古代湖では種分化が進んだ結果、多くの固有種が分布しています。
その中でキルトカラ属は、キルトカラ・モーリー1種のみからなっています。
特徴
キルトカラ・モーリーの体長は最大20cm程度です。
体型はやや細長く左右に平たく側扁していて、背鰭の基底部が長いのが特徴。
そして最も注目されるのは、大きく前方に突き出たコブの存在でしょう。
そのため、属名のキルトカラ(Cyrtocara)はギリシャ語で突出した頭を意味している他、英名でも、ハンプヘッドシクリッド(hump-head cichlid、こぶ頭のシクリッドの意)と呼ばれています。
また、イルカの頭部に似ていることからブルードルフィンシクリッド(blue dolphin cichlid、青いイルカのシクリッドの意)という別名も存在します。
キルトカラ・モーリーの体色は鮮やかな青色で、通常雄の方が雌より明るい色合いをしています。
生態
キルトカラ・モーリーは東アフリカの、モザンビーク、マラウィ、タンザニアの3ヶ国にまたがる巨大なマラウィ湖に分布しています。
マラウィ湖は古い時代に形成された古代湖で、カワスズメ科だけで800種を超える魚が知られています。
その多くが、独自の進化を遂げたこの湖の固有種で、湖のガラパゴス諸島の異名を持ちます。
キルトカラ・モーリーもそうした固有種の1つです。
キルトカラ・モーリーはマラウィ湖沿岸の、浅い砂地の湖底に生息し、独自の縄張りを持ちます。
マラウィ湖ではより大型の魚類が生息しており、湖の砂底を掘り返して獲物を探します。
キルトカラ・モーリーはそうした大型魚の近くをついて回り、掘り返された砂の中から小さな甲殻類や巻貝を見つけて捕食することが知られています。
キルトカラ・モーリーの鮮やかな青い体色も、自分の縄張りを主張するためなのではないかと考えられています。
カワスズメ科の多くの魚は稚魚を口の中で保護しながら育てる口内保育の習性で知られています。
キルトカラ・モーリーも繁殖において口内保育の習性を持っており、砂地に産みつけられた卵を、雄が放精した後に雌が口の中に咥え込み、孵化・保育に当たります。
人との関わり
キルトカラ・モーリーは生息地であるマラウィ湖の水質汚染が進んでいることと、観賞魚としての人気の高さから採集圧が強いこともあって、個体数を減らしています。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの最新版での評価は危急種です。
キルトカラ・モーリーは美しい体色から、他の多くのアフリカ大陸産カワスズメ科魚類と同様に観賞魚としての人気が高く、多くのアクアリストに飼育されています。
一方で、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、キルトカラ・モーリーを飼育している水族館は国内に存在していないようです。
最後に
キルトカラ・モーリーはとても綺麗な青色をした魚で、観賞魚としての人気が高いことから、アクアショップなどで見かける機会があるかも知れません。
しかし、原産地であるマラウィ湖では、観賞魚目的の採集圧も加わって個体数を減らし、静かに絶滅への道を歩んでいることを忘れてはならないでしょう。