皆さんはヘコアユという魚をご存知でしょうか?
ヘコアユは頭を下にした、逆立ち泳ぎをするとてもユニークな魚として知られています。
しかも群れを作り、みんな揃って逆立ち泳ぎするのですから、とても異様な光景です。
今回は、そんなヘコアユの特徴や生態についてご紹介いたします。
ヘコアユの基本情報
学名 | Aeoliscus strigatus |
英名 | Razorfish |
分類 | トゲウオ目ヘコアユ科ヘコアユ属 |
分布・生息域 | 相模湾以南 /インド洋、西部太平洋 |
大きさ | 5~7cm程 |
分類
ヘコアユ(Aeoliscus strigatus)はトゲウオ目ヘコアユ科ヘコアユ属に属する海水魚です。
トゲウオ目は、一般的な魚類とはかけ離れた、独特な対決を持つ種類が多く含まれているグループで、タツノオトシゴやヨウジウオ、ウミテング、ヘラヤガラなどが属しています。
その中でもヘコアユ科は剃刀のような独特の体型を持ち、逆さまに泳ぐ習性を持つのが特徴。細長い吻部を持つサギフエ科とは近縁とされています。
特徴
ヘコアユの体長は5~7cm程度で、最大で15cmの個体の記録があります。
体型は細長くて極端に側扁し、硬い甲板に覆われているのが特徴。吻は管状で歯がありません。
ヘコアユの体色は黄褐色で、口先から後方に向かって全身を貫くかのように、黒褐色の縦帯が1本走っています。
ヘコアユは成長段階によって体後部が変化することが知られていて、幼魚では背鰭と尾鰭が普通の位置にありますが、成長するに従ってこれらの鰭は体の後部へと移動してゆくのです。
この移動によって、成魚に見られる体後部の棘は背鰭の第一棘が長く伸びたもので、その下に背鰭の残りの部分や尾鰭が残っています。
生態
ヘコアユはインド洋から西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に分布している魚で、西はタンザニアやセイシェルから東はバヌアツまで、北は南日本から南はオーストラリアのニューサウスウェールズ州までで知られています。
国内では相模湾以南の太平洋側から琉球列島や小笠原諸島で見られます。
ヘコアユは水深2~42mの浅い海に生息していて、サンゴ礁やその周辺の砂底域を好みます。
小さな群れを作っていることが多く、逆立ちの状態で泳ぎます。
ヘコアユの幼魚は海藻片に擬態しているかのような色合いを持ち、夏季には波間に漂う姿が見られます。
肉食性で、動物プランクトンを捕食します。
観賞魚として人気者!!
ヘコアユは通常食用魚として利用されることはなく、漁獲の対象にもなっていません。
しかし、そのユニークな姿と、逆立ちで泳ぐ不思議な習性から人気の高い魚であり、スキューバダイビングで探索の対象となる他、観賞魚として飼育されることも多い魚です。
そのため、観賞魚として販売することを目的に、採集が行われることはあります。
ヘコアユは細長い吻部に小さな口を持つため、通常の配合飼料は食べられず、飼育に当たっては動物プランクトンの代わりになる餌を用意しなければなりません。
そのため、アクアリストの間では人気の高い魚ですが、初心者には飼育困難な魚と言えるでしょう。
また、ヘコアユは水族館においても飼育されることがあり、愛嬌のある姿は入館者の人気を集めています。
まとめ
ヘコアユは、トゲウオ目ヘコアユ科ヘコアユ属に属する海水魚です。
ヘコアユの、他に類を見ない逆立ち泳ぎの習性を持ち、愛嬌に富んだ姿は私たちの関心を常に惹きつけています。
しかし、その不思議な逆立ち泳ぎは、野生においては海藻の中に上手く隠れたり、ガンガゼの棘の間に潜って天敵を避けるといった有益な効果を得られていると考えられています。
常に生存競争にさらされている野生生物の姿や行動には、無駄というものは存在しないのです。