皆さんはオオガタスジシマドジョウについてご存知でしょうか?
オオガタスジシマドジョウは従来、スジシマドジョウ大型種と呼ばれてきた魚で、非常に分類がややこしくなっている魚です。
今回は、そんなオオガタスジシマドジョウの生態や特徴についてご紹介いたします。
オオガタスジシマドジョウの基本情報
学名 | Cobitis magnostriata |
分類 | コイ目ドジョウ科シマドジョウ属 |
分布・生息域 | 琵琶湖水系 |
大きさ | 8~10cm程 |
分類
オオガタスジシマドジョウ(Cobitis magnostriata)はコイ目ドジョウ科シマドジョウ属に属する淡水魚です。
コイ目はユーラシア大陸を中心にアフリカ大陸や北アメリカ大陸にも分布している淡水魚を中心としたグループで3,200種以上が含まれています。
そのうちのドジョウ科は腹部が平らな形状をした底生魚の仲間で、およそ160種が知られています。
しかし、後述のように分類研究が進んでいないため、今後種数が大幅に増える可能性もあるグループと言えるでしょう。
シマドジョウ属は100種近くが知られているドジョウ科最大の属で、日本国内では従来シマドジョウとスジシマドジョウの2種のみが生息するとされていましたが、研究の進展でこれまでに少なくとも14種の存在が明らかとなり、今後も新たな種が発見される可能性があります。
オオガタスジシマドジョウも従来、スジシマドジョウ大型種とされていましたが、独立種として2012年に記載されました。
特徴
オオガタスジシマドジョウの体長は8~10cm程度です。
従来スジシマドジョウとされていた種群の中では最大種で、体型は細長い円筒形をしています。
口髭が6本あり、目の下に棘があるのが特徴。
オオガタスジシマドジョウの体色は、淡い灰色で、体側面には黒色の明瞭な縦縞が走っています。
尾鰭の基部には黒色の斑紋があり、尾鰭自体にも不明瞭ながら縦縞が見られます。
ただし、体色や模様については、個体差が大きいため、近年まで同種とされてきた近縁他種との外見上の判別は困難です。
生態
オオガタスジシマドジョウは琵琶湖固有種です。
しかし、琵琶湖産アユの放流に混じる形で、国内移入種として他の水系にも分布を広げている疑いがあり、東京都の奥多摩湖などで見つかっています。
オオガタスジシマドジョウは琵琶湖では北湖の西岸に多く見られ、水深1~3mの砂底や礫底、泥底に生息しています。
砂泥底によく潜っていて、雑食性で砂の中に含まれる有機物や小動物を砂ごと吸い込み、鰓から砂だけを出して食べます。
また、ユスリカの幼虫や藻類を食べることも知られています。
繁殖期は初夏で、産卵のために琵琶湖に流入する小さな河川や水路に遡上する姿が見られます。
個体数が減少
オオガタスジシマドジョウは、一般的に食用魚として利用されることなく、漁獲も行われていません。
しかし、近年は河川の改修によって生息地や産卵に適した場所が減りつつあります。
それに加えて外来種であるオオクチバスやブルーギルによる食害も大きく、個体数が減少しています。
環境省のレッドリストではオオガタスジシマドジョウを絶滅危惧種IB類に指定しています。
一部の淡水魚愛好家は、オオガタスジシマドジョウの飼育を行っていますが、そのための採集もまた、この種にとっての生存の脅威となっています。
観たい時は?
オオガタスジシマドジョウは水族館で飼育されることもあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、琵琶湖博物館とサケのふるさと千歳水族館の全国の2ヶ所の水族館で飼育されています。
最後に
外見上の区別が難しいために分類が混乱し、最近まで独立種として扱われてこなかったオオガタスジシマドジョウ。
そのため、生態についても、近縁他種との違いがまだあまりよく分かっておらず、未だに謎の多い魚と言えます。
そんな魚が既に人の活動の影響で絶滅危惧種に指定されているのです。
まずはオオガタスジシマドジョウの保護を行い、絶滅を防ぐのが先決でしょう。