皆さんはイガグリガニという生物をご存知でしょうか?
イガグリガニはその名のごとく、全身が棘だらけのまるでイガグリのような姿をしたカニです。
どうしてこんな姿になってしまったのか?そして多くの方が気になるであろう、食べられるのかどうか?
今回は、そんなイガグリガニの特徴や生態についてご紹介いたします。
イガグリガニの基本情報
学名 | Paralomis hystrix |
英名 | Igaguri-Gani |
分類 | エビ目タラバガニ科エゾイバラガニ属 |
分布・生息域 | 東京湾以南 |
大きさ | 16cm程 |
イガグリガニ(Paralomis histrix)は軟甲綱十脚目タラバガニ科エゾイバラガニ属に属する深海性のカニです。
エビやカニ、ヤドカリといった代表的な甲殻類が属している軟甲綱の十脚目にあって、タラバガニ科は異尾下目に含まれます。
異尾下目は別名ヤドカリ下目とも言い、その名の通りヤドカリ類が含まれているグループです。
このグループの最大の特徴は、第五歩脚がごく短くなって背中側へ折り畳まれており、外見上は歩脚が左右で8本しかないように見えることです。
タラバガニ科はイガグリガニ以外にも、科名に冠されたタラバガニやハナサキガニといった美味しいことで有名なカニが含まれており、これらのカニ類は実はカニではなくヤドカリの仲間なのです。
特徴
イガグリガニの甲長は16cm程度です。
体型は丸みが強く、やや前方に尖った五角形。
5対の歩脚のうち、第一歩脚が鋏脚になっていて、また第五歩脚は小さくて鰓室に差し込まれて隠れているために、外見上は脚が3対しかないように見えます。
右の鋏は左の鋏よりやや大きく、そして全身が栗のイガのような硬い棘状の突起で覆われています。
近縁のタラバガニやハナサキガニなども同様の棘に覆われていますが、イガグリガニの棘はより鋭いので、素手で触ると怪我をしかねないほどです。
若い個体ほど棘が長い傾向があります。
イガグリガニの体色は淡紅色で、近縁のタラバガニが生体時に暗紫色をしているのに比べると赤みが強い種類と言えるでしょう。
生態
イガグリガニは関東から九州にかけての太平洋側に分布しており、日本近海固有の生物と考えられてきましたが、最近になってニュージーランドから発見されたとの報告があります。
国内では東京湾、相模湾、駿河湾、遠州灘、熊野灘、土佐湾、天草灘、薩南海域などで見られます。
イガグリガニは水深180~400mの深い海底に生息しており、深海性のカニと言ってもいいでしょう。
餌は動物質で、海底の小動物を捕食します。
観察が困難が深海の生物であるため、イガグリガニの生態についてはまだ分かっていないことが多いのが実情です。
食べられる?観たい時は?
イガグリガニは底曳き網の漁獲物に混じる形で漁獲されますが、一度にまとまった数は獲れません。
美味しいカニとして珍重されるタラバガニやハナサキガニの近縁種だけに、イガグリガニの味も悪くはないのですが、小型で身の量が少ない上に、全身棘だらけで扱いにくいということもあって、あまり食べられないカニです。
市場でも産地以外では見かける機会が少なく、高値もつかないようです。
一方でイガグリガニはその独特の外見から水族館で深海生物として飼育展示されることがあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年時点で、鳥羽水族館、名古屋港水族館、東海大学海洋科学博物館、鴨川シーワールドなど、全国の11ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
見るからに痛そうな棘だらけのイガグリガニ。
その一度見ると忘れられないような姿は、天敵から身を守るために進化を続けた結果の姿と言えます。
まさに過酷な深海の世界で生き抜くための知恵とも言えるでしょう。
そんなイガグリガニは、深海生物の代表格として、水族館の深海水槽で展示されることが多いので、もしご覧になる機会があれば、じっくり観察してみてください。