皆さんはモツゴという魚をご存知でしょうか?
モツゴは日本の川や池、水田などに広く生息しているとても身近な淡水魚で、食材としても利用されることがあります。
今回は、そんなモツゴの生態や特徴についてご紹介いたします。
モツゴの基本情報
学名 | Pseudorasbora parva |
英名 | stone moroko / topmouth gudgeon |
分類 | コイ目コイ科モツゴ属 |
分布・生息域 | 関東以西の本州,四国.九州、朝鮮半島、中国東部、台湾、ロシア |
大きさ | 8cmほど |
分類
モツゴはコイ目コイ科モツゴ属に属する淡水魚です。
コイ目はユーラシア大陸からアフリカ大陸、そして北アメリカ大陸にかけて分布し、3,000種以上が知られているグループで、全淡水魚の4分の1以上を占める、淡水魚としては最大の分類群です。
その中でもコイ科にはコイやフナ、タナゴといった日本でも身近な淡水魚が多く含まれています。
モツゴ属は東アジアに分布する6種が知られており、日本には西日本に分布するモツゴの他に、東日本にシナイモツゴが、濃尾平野にウシモツゴの、合わせて3種が分布しています。
特徴
モツゴの体長は8cm程度で、最大で11cmに達します。
体型は細長くて側扁しています。
口が吻端にあって受け口で小さく、顔が細長く見えるために「クチボソ」という地方名を持ちます。
ただし、近畿地方ではムギツクにこの呼び名を用いるために、注意が必要です。
モツゴの体色は、灰色から銀灰色です。
体側面の中央を縦走している完全な側線を持っていて、この側線に沿って1本の明瞭な黒色縦線が見られます。
ただし、地域差や個体差が大きい上に、成長につれてこの縦線が消失する個体も存在します。
同属の近縁種であるシナイモツゴやウシモツゴは側線が不完全であることから、区別が可能です。
生態
モツゴは日本の本州、四国、九州の他に朝鮮半島、ロシアの沿海地方や中国東部、台湾にかけて分布している魚です。
国内では関東以西の本州、四国、九州に自然分布しています。
ただし、モツゴはその環境適応力の高さから、有用魚種の放流に紛れて分布域を拡大しており、国内では東北地方や北海道、南西諸島、国外でもヨーロッパやアジア各地で外来種として生息が確認されています。
モツゴは湖沼や河川下流域、ため池、水田など様々な淡水域に生息しています。
水草が豊富な泥底の止水域を好みますが、環境変化への適応力が高いために、コンクリートで護岸された都市部の河川でもよく見られる魚です。
モツゴの食性は雑食性で、小さな水生昆虫やプランクトン、付着藻類まで様々なものを食べます。
中でもユスリカの幼虫(アカムシ)を特に好んで捕食します。
餌の種類は多様ですが、同じように、サギ類のような水鳥、大型の肉食魚、タガメのような水生昆虫まで、多くの天敵も抱えています。
モツゴの繁殖期は4~8月と長期に渡り、ヨシのような植物の根元、石の表面などへ数回に分けて産卵します。
この時期になると、雄は水草の茎や底石の表面に付いた苔やゴミを取り除いて産卵床とし、その周りに縄張りを形成するようになります。
卵が孵化するまで数日を要しますが、その間雄は卵を守って、近づく魚を追い払う習性が見られます。
産まれた稚魚は通常1年ほどで成熟し、寿命は3~5年とされていますが、飼育下ではもっと長くなる傾向があります。
食べられる?
モツゴは古くから日本人にとって身近な淡水魚であり、容易に採集できるため、食材として利用されてきました。
一般に鮮魚として市場に流通することはありませんが、各地で郷土料理に用いられており、佃煮や甘露煮などに調理される他、唐揚げや天ぷらで食べても美味しいとされています。
ただし、モツゴに限らず淡水魚は寄生虫の危険性があるため、生食は避けるべきでしょう。
見たい時は?
また、モツゴは淡水域であればどこでも身近に生息している魚であるために、飼育されることも少なくありません。
大きく成長することもなく、丈夫で飼いやすい魚ですが、繁殖期の雄は攻撃的になるため、他種との混泳には注意しなければなりません。
モツゴは水族館で飼育展示されることもあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、かごしま水族館、須磨海浜水族園、琵琶湖博物館、さいたま水族館など、全国の多くの動物園で飼育されています。
通販で買える?
モツゴは通信販売で購入することも可能です。
在庫状況は変動しますので、下記のバナーからそれぞれの検索結果をチェックしてみてください。
まとめ
モツゴは、「クチボソ」や「ヤナギモロコ」など様々な地方名を持つことからも分かるように、古くから日本人に親しまれてきた淡水魚です。
環境適応力の高さから、現在でも都市部の河川や公園の池などで見られることが多く、身近な魚と言えるでしょう。
それでもオオクチバスやブルーギルのような魚食性の外来魚が侵入した水域では個体数の減少が報告されていて、都道府県によってはレッドリストで絶滅危惧種に指定しているところもあります。
また東日本で国内移入種として分布している個体群は中国大陸から持ち込まれたものではないかとの指摘も出ており、遺伝子汚染の可能性も懸念されている状況です。
かつてどこでも見られたメダカが絶滅の危機にさらされていることを教訓とするなら、モツゴも身近な魚だからこそ、手遅れにならない今のうちに、保護の方法について考えておくことが必要でしょう。