今回は、ミナミハコフグの生態や特徴についてご紹介させていただきます。
ミナミハコフグの基本情報
学名 | Ostracion cubicus |
英名 | Yellow boxfish |
分類 | フグ目ハコフグ科ハコフグ属 |
分布・生息域 | 和歌山以南、西部太平洋、インド洋 |
大きさ | 45cm程 |
ミナミハコフグはフグ目ハコフグ科の海水魚です。
その名の通り四角い箱型の魚で、幼魚の時の姿はまるで金色に光るサイコロの様です。
その愛らしい姿形から、観賞魚として海水魚飼育の愛好家の方やダイバーに大変人気の有るお魚です。
生息域
成魚は太平洋西部~インド洋の熱帯・亜熱帯海域に分布していて、幼魚は日本の太平洋側和歌山県より南の暖かい海域でよく見ることが出来ます。
生態
成魚は通常水深50mよりも浅いサンゴ礁・岩礁等に単独で暮らしていて、繁殖期(春)に入るとペアを作り卵を生んで繁殖します。
雑食性で主に海藻類・海綿・小さなエビやカニ等の甲殻類を食べています。
ミナミハコフグの幼魚は夏に黒潮に乗り日本にやってきます。
そして水温が下がる秋には越冬できずに死んでしまう為「死滅回遊魚・季節回遊魚」の一つとして知られています。
身体的特徴
成魚の体長は約45cm程ですが季節回遊魚の為、日本の海域では大きく育った成魚を見る事はできません。
体型は英名でも「イエローボックスフィッシュ」と付けられている程、箱のようなボディーの持ち主ですが、その四角い体は硬い板状の骨がガッチリと箱型に組み合わさっている構造です。
この四角い体は俊敏で安定性のある泳ぎと外敵から身を守る役目を担っています。
2006年にはドイツの有名な車メーカーから、このミナミハコフグの四角いボディー構造に着想を得たコンセプトカーが発表されました。
幼魚時代の体色は濃い黄色に黒目と同じ位の大きさの黒いドットが点在しています。
黄色と黒の体色は「私に触ると危険だよ」という事を示す警告色です。
成魚になるとその鮮やかな黄色は灰色からオリーブグリーンの落ち着いた色調に変化し、淡いブルーに黒い縁取りが付いた水玉が体の表面に表れます。
幼魚をペットにしたい!
ミナミハコフグは外敵から襲われた時、皮膚の表面から瞬時に「パフトキシン」という有毒なタンパク質成分が入った粘液を放出します。
この毒は神経毒で、小さな水槽で飼育した場合は、毒を放出したミナミハコフグは勿論の事、同じ水槽内で飼育していた他の魚達諸共全滅させてしまう程の殺傷力が有ります。
したがって、観賞目的で飼育する際は水族館のような大きな容量の水槽で飼うか、家庭では他の魚とは混泳させずに単独で飼う方が望ましいと言われています。
この様に粘液毒爆弾を抱えているミナミハコフグですが、幼魚の愛らしい姿にはどうしようもなく惹かれてしまいますね。
個別の水槽で飼育する等取扱いに少々気を使いますが、海水魚を扱うお店でも幼魚が2000円~3000円前後で販売されています。
幼魚なので初期の餌付けには少し根気強さが必要です。
慣れれば人工の餌でも大丈夫になります。
物食いが良いので排せつも旺盛です。
そして、食べ物を口から出したり入れたりする食事方法のため水が汚れやすい魚ですので、ろ過装置は強力な物を入れてこまめに水替えをしましょう。
ミナミハコフグを見てみたい
飼うのはちょっと大変そうだけどあの可愛い姿が見たいですよね。
彼らが黒潮に乗り日本にやって来る7月~9月の間は、日本の暖かい海域の潮だまりにいたり水深の浅い海にもいるのでシュノーケリングの際に見る事も出来ます。
ビックリさせると毒が出てしまうのでいくら可愛くてもお触りはダメですよ。
この時期は国内の水族館でも展示飼育されている場合が多いですのでぜひ見に出かけてみてください。
日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、
上越
葛西臨海水族園
マクセルアクアパーク品川
すみだ水族館
碧南海浜水族館
志摩マリンランド
伊勢シーパラダイス
大阪・海遊館
マリンワールド海の中道
水族館「うみたまご」
かごしま水族館
沖縄美ら海水族館
上記の12ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
幼魚時代のミナミハコフグは、視線を奪う程の鮮やかな黄色にポップな黒い水玉模様がチャームポイントの海水魚です。
まるで世界的に有名な女流現代作家が作る水玉模様のかぼちゃのオブジェのように芸術的です。
しかし、日本の海で見られる小さく可愛い姿からは想像できない程の殺傷力の有る粘液毒を放出したり、秋には死んでしまう儚さを持っていたりと小悪魔的な魅力を十分に持っているお魚です。