清流の女王アユ。
この魚を知らない日本人は少ないかと思いますが、ではリュウキュウアユをご存知の方は?と尋ねれば、知っている方はぐっと少なくなるのではないでしょうか?
リュウキュウアユとはどんな魚なのか?
そして、アユとはどんな違いがあるのか?
今回は、リュウキュウアユの特徴や生態、アユとの違い、絶滅の危惧について探ってみましょう。
リュウキュウアユの基本情報
学名 | Plecoglossus altivelis ryukyuensis |
英名 | Ryukyu ayu-fish |
分類 | キュウリウオ目キュウリウオ科アユ属 |
分布・生息域 | 奄美大島、沖縄本島 |
大きさ | 10~15cm程 |
分類
リュウキュウアユ(Plecoglossus altivelis ryukyuensis)は、キュウリウオ目キュウリウオ科アユ属アユの琉球列島固有亜種です。
亜種とは、種の下位区分で、別種とするほどではないものの、独特の形質的・遺伝的特徴を持った個体群を指します。
種としてのアユは北は北海道から日本列島全域、朝鮮半島、台湾、中国沿岸部、ベトナム北部にかけての東アジア一帯に分布する魚です。
そのうち、琉球列島に分布し、遺伝子解析の結果から他の地域の個体群とはおよそ100万年前に分離したと推定されている亜種がリュウキュウアユということになります。
特徴、アユとの違いは?
リュウキュウアユは日本本土のアユと比較するとやや小型で、体長は10~15cm程度。
外見上もアユとよく似ているものの、ややずんぐりとした体型をしています。
また、胸鰭軟条数や、部分的な鱗の数がアユに比べて少なくなっているのも特徴です。
もっとも、リュウキュウアユ内においても、沖縄本島産と奄美大島産では形態上の違いが見出されていて、長期間両島間での交流が絶たれ、遺伝的分化が進んでいることが判明しています。
生態
リュウキュウアユは琉球列島のうち、奄美大島と沖縄本島に生息していましたが、沖縄本島の在来個体群は1978年に採集されたのを最後に確認されず、絶滅しています。
現在、沖縄本島の河川で見られるリュウキュウアユは、奄美大島の個体群を再導入し、放流・定着させたものです。
本来の沖縄本島のリュウキュウアユ個体群は、今では標本でしか残っていません。
リュウキュウアユの基本的な生活環は日本本土のアユと大きくは変わりません。
両側回遊と言って、川で孵化し、海へ下って成長してから、再び川を遡上して産卵を行います。
繁殖期は本土のアユよりやや遅くて12月から2月になりますが、この理由は、アユが産卵を行うに当たって水温が20度以下に下がる必要があり、気候の違いから琉球列島では水温の低下が日本本土より遅れるからではないかと考えられます。
一旦海へ下って動物プランクトンを食べながら成長したリュウキュウアユは産まれた河川へ戻って遡上し、川では石に着いた藻類を食べながら暮らし、繁殖期が訪れるのを待つのです。
絶滅の危惧
沖縄本島北部の河川に生息していた在来のリュウキュウアユ個体群は、ダムの造成などの河川改修や、森林伐採などによる赤土の流入、そして生活排水による水質汚染で、餌場や産卵場が失われてしまい、1970年代に絶滅してしまいました。
1992年になって、奄美大島の個体群を再導入した結果、一部のダム湖に陸封型した個体群が定着し、周辺河川で稚魚の遡上も確認されているものの、本来のリュウキュウアユが持つ両側回遊型の生活史が確立されたのかは分かっていません。
また奄美大島のリュウキュウアユ個体群も、生息範囲が狭く、容易に環境が悪化しかねないことから、安定しているとは言いがたい状況です。
そのため、産卵期と遡上期の河川工事の停止や禁漁などによって保護が図られています。
環境省はリュウキュウアユを絶滅の危機に瀕しているとして、絶滅危惧IA類に指定しています。
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まとめ
リュウキュウアユは、キュウリウオ目キュウリウオ科アユ属アユの琉球列島固有亜種です。
リュウキュウアユは日本本土のアユとは古い時代に分離し、琉球列島で独自の進化を遂げた固有の亜種です。
しかし、人の活動によって沖縄本島の在来個体群は絶滅してしまい、残された奄美大島の個体群も安泰とは言いがたい状況にあります。
こうした絶滅危惧種の保護には、地元に暮らす人々の協力が不可欠であり、かつそうした地元の人々の負担を減らすためのバックアップが広く求められます。
そのためにも日本人全体がリュウキュウアユという魚のことを知り、関心を深めることが重要なのではないでしょうか?