皆さんはクロウミウマという魚をご存知でしょうか?
クロウミウマはいわゆるタツノオトシゴの仲間。
普通の魚とは似ても似つかない不思議な体型を持つクロウミウマの特徴や生態について、今回はご紹介いたします。
クロウミウマの基本情報
学名 | Hippocampus kuda |
英名 | Spotted seahorse |
分類 | トゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属 |
分布・生息域 | 南日本、インド洋、中・西部太平洋 |
大きさ | 15cm程 |
クロウミウマ(Hippocampus kuda)はトゲウオ目ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属する海水魚です。
トゲウオ目はタツノオトシゴやヘコアユ、ヘラヤガラなど、普通の魚とはかけ離れた変わった体型を持つ種が多く含まれるグループです。
その中でもヨウジウオ科はトゲウオ目全体の種の8割以上を占める最大のグループで、全身をリング状の骨板で囲まれた細長い体を持つのが特徴。
さらに、その中でも体を直立させて頭部が前を向くという、普通の魚では考えられない姿をしているのがクロウミウマを含むタツノオトシゴ属の仲間です。
特徴
クロウミウマの体長は15cm程度ですが、最大で30cmに達した個体の記録があります。
雌より雄の方が大きくなっていて、体型は典型的なタツノオトシゴ類のもの。
全身を隆起のある骨板からなる体輪で覆われて直立し、腹鰭や尾鰭はなくなっています。
管状で細長い吻部の先に小さな口があり、歯はありません。
また雄は、腹部に袋状の育児嚢を持ちます。
体色は個体変異が大きく、完全な黒色から茶色、黄色まで様々。暗色の斑点や帯を持つ個体も存在します。
生態
クロウミウマはインド洋から中・西部太平洋にかけて広く分布する魚で、西はパキスタンから東はハワイ諸島、北は南日本から南はオーストラリア北部までで知られています。
国内では主に琉球列島で見られ、鹿児島や高知、八丈島などにも出現します。
クロウミウマは水深0~68mの海域から知られていますが、通常は8m以下の浅い海に生息しており、内湾や河川汽水域に多く、藻場を好みます。
クロウミウマに尾鰭は存在しませんが、尾部の先端をサンゴの枝や海藻に巻きつかせて体を固定し、エビやカニなどの甲殻類、小さな魚の稚魚、動物プランクトンなどを吸い込んで捕食します。
繁殖においては、雌が雄の育児嚢に産卵し、孵化するまでの間は雄が育てます。
絶滅の危機?
クロウミウマは通常食用魚として扱われることはありませんが、中国ではクロウミウマを含む大型のタツノオトシゴ類の干物が漢方薬として珍重されており、そのための乱獲が問題になっています。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、クロウミウマは危急種(VU)に指定されています。
観賞魚としてのクロウミウマ
また、クロウミウマはその特異な外観から観賞魚としてもアクアリストの間で飼育されることがあります。
水族館でもクロウミウマの飼育展示は行われており、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年時点で、沖縄美ら海水族館、須磨海浜水族園、鳥羽水族館、サンシャイン水族館など、全国の11ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
普通の魚では考えられない特異でユーモラスな外観をしたクロウミウマ。
しかし、そんなクロウミウマを含むタツノオトシゴの仲間たちには、漢方薬目的の乱獲による絶滅の危機が迫っています。
このような魚が地球上から姿を消すことがないように、私たちも注意して見守っていかなければなりません。