皆さんはアマクサクラゲという生物をご存知でしょうか?
アマクサクラゲは主に西日本の沿岸に出現する種で、典型的なクラゲの姿形をし、ふわふわと海を漂っています。
しかし、強い刺胞毒を持っていて、人にとってはちょっと厄介な存在。
今回は、そんなアマクサクラゲの特徴や生態についてご紹介いたします。
アマクサクラゲの基本情報
学名 | Sanderia malayensis |
英名 | Monn jellyfish |
分類 | クラゲ目オキクラゲ科アマクサクラゲ属 |
分布・生息域 | 富山湾以南、インド洋、西部太平洋 |
大きさ | 傘径6~10cm、全長25cm程 |
分類
アマクサクラゲ(Sanderia malayensis)は刺胞動物門鉢虫綱旗口クラゲ目オキクラゲ科アマクサクラゲ属に属するクラゲです。
刺胞動物とは、触手に刺胞と呼ばれる毒液を注入する針を備えた細胞を持つ生物のグループで、クラゲやサンゴ、イソギンチャクの仲間が含まれており、大半の種が海に棲息しています。
その中で鉢虫綱とはその名のごとく鉢の形、つまり円盤状の傘を持ち、海を浮遊する典型的なクラゲ類が属しているグループです。
その中でもアマクサクラゲはオキクラゲ科において、アカクラゲと共に日本近海で見られる代表的な種と言えるでしょう。
形態と特徴
アマクサクラゲの傘は、直径が6~10cmほどとなります。
傘自体は扁平な半球型をしていて、表面には刺胞を含むたくさんの小さな突起が放射状に並んでいるのが特徴。
傘の縁には16個の感覚器と16本の触手が交互に配置されており、長く伸びた触手が、中心の口の周りから伸びる4本の口腕を取り囲んでいます。
アマクサクラゲに限らず、クラゲ類は一般的にこの口の他に腔所が存在しておらず、肛門の機能を兼ねているのです。
生殖腺は間軸にあって馬蹄型をしています。
アマクサクラゲの体色は透明感が強くて一見白っぽいですが、よく見るとごく淡い紅色か黄色をしていることが分かります。
生態
アマクサクラゲはインド洋から西部太平洋の熱帯・亜熱帯海域を中心に広く分布しており、西は東アフリカから東はフィジーまで、北は南日本から南はニュージーランド北部までで知られています。
国内では太平洋側では相模湾以南、日本海側では富山湾以南で見られ、黒潮や対馬海流といった暖流に乗って出現します。
アマクサクラゲは、特に九州西岸では普通種のクラゲで、夏季に天草諸島近海で数多く見られることから和名の由来ともなりました。
アマクサクラゲの餌はクラゲ類で、他種のクラゲを捕食します。
飼育下では同種を多数同じ水槽に入れても共食いをしないことから、自身と同じ種を認識することができると推測されていますが、具体的にどのような方法で見分けているのかは分かっていません。
アマクサクラゲの幼生であるポリプは、飼育下では簡単に繁殖させて得ることができますが、海においてはほとんど発見例がありません。
鹿児島湾の水深100mの海底にあるサツマハオリムシのコロニーに付着していたのが唯一の発見例です。
通常のクラゲは1つのポリプから複数のエフィラが出現しますが、アマクサクラゲの1つのポリプからは1つのエフィラしか出てきません。
エフィラがクラゲの形になるまで2ヶ月ほどを要します。
夏の海の厄介者
アマクサクラゲは傘の粒状の突起や触手に強い刺胞毒を持っており、触れると刺されて強い痛みを感じます。
アマクサクラゲは夏季に西日本の沿岸に現れることが多いため、特に海水浴客の被害が目立ちます。
長い触手にうっかり触れて刺されると、そのまま体に線状の痕が残ることもあり、夏の海のかなりの厄介者と言えるでしょう。
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観賞用として人気
アマクサクラゲは危険な半面、透明感のある体でふわふわと海中を漂う姿は優雅で美しく、人を見入らせる魅力を持っています。
そのためか、水族館で飼育展示されることもあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年時点で、沖縄美ら海水族館、須磨海浜水族園、鴨川シーワールド、加茂水族館など、全国の11ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
アマクサクラゲは海水浴で海に入っている時に刺されると、かなりの痛みを味わされるクラゲです。
しかし、刺される人が多いということは、それだけ人にとっち身近なクラゲと言うこともできるのではないでしょうか?
海中をゆったりと浮遊する透明感に満ちた物体は、とても不思議で、見ていて飽きない存在です。
世の中の水族館でクラゲ類の展示がもてはやされるのも、この独特の魅力によるものなのでしょう。