「メジナ」と聞いて途端に目が輝き始めたら、釣り好きの太公望に違いありません。
釣り人によっては、このメジナを「磯釣りの王者」と豪語する人もあるほどです。
しかし、そんなメジナ釣りに目のない釣り人でも、知ってはいるけど「あまり見た事ないな」というのがオキナメジナですが、いったいどんな魚なのでしょう。
オキナメジナの基本情報
学名 | Girella mezina |
英名 | Yellowstriped blackfish |
分類 | スズキ目メジナ科メジナ属 |
分布・生息域 | 房総半島以南、東シナ海 |
大きさ | 40~50cm程 |
生息域
メジナの仲間は世界で15種類いますが、日本では3種類いるだけで、房総半島以南から沖縄にかけて生息しています。
その中の1種、オキナメジナが主に生息しているのは琉球列島で、北に行くほど少なくなります。
そして逆に沖縄付近では、ほとんどオキナメジナしか見られなくなります。
棲んでいるのは潮通しの良くて隠れる場所の多くある岩礁域で、その条件が揃う漁港や堤防のテトラポット帯で良く見られます。
幼魚の間は潮溜まりや汽水域で生活しています。
体形・体色
典型的な魚体の形で、子供に魚の絵を描かせたらこんな形になるのでしょう。
他の2種類のメジナと比べると体高が高く、上唇が分厚くなっているのが特徴です。
体長は成魚で40~50cmになります。
体色は全体が黒っぽく、背鰭中ほどから臀鰭前端に向かって白または黄色の帯模様が1本走っているのが、他のメジナにない特徴です。
この帯は幼魚の時にははっきりしていて、成魚になると年を経るほどに色が薄くなっていきます。
釣りあげると消えてしまうので、遊泳している画像で初めて見たというメジナ釣りの釣り人もいます。
食性
食性は雑食性でゴカイ・甲殻類の動物性と海藻など植物性の両方を食べますが、オキナメジナは他のメジナと比べると草食性が強い様です。
呼び名
メジナの名前は、目が口の近くに位置する事から、「目が近い魚」が訛って「目近魚(めじかな)」、「めじな」となったという説があり、漢字では「眼仁奈、目仁奈」と書きます。
オキナメジナは「翁眼仁奈」となります。
メジナは地方によって色々呼び名が変わり、例えばグレ(関西・四国)、クロ(九州・岡山)、クシロ(伊豆)などとなりますが、オキナメジナも、シチュー(沖縄)、シチ(奄美)、牛グレ(和歌山)、スカエース(伊豆)と様々です。
磯釣り師の人気
メジナは磯釣り師から絶大な人気があり、フカセ釣りの対象魚といえばメジナです。
人気の理由はその引きの強さ。
そして非常に警戒心が強い為に、魚との知恵比べが面白いと評判なのです。
しかし、この人気は九州以北で主に釣れるメジナとクロメジナの事で、釣り師の間ではそれぞれクチブト・オナガが通称となっていますが、オキナメジナは入っていません。
釣り人人口が圧倒的に多い本州では、オキナメジナが少な過ぎてほとんど釣れない事がその理由です。
メジナ釣りが好きな人でも、稀にオキナメジナが掛かると「変なメジナが釣れた」というほどです。
また他の2種と比較して、オキナメジナを釣るのは簡単だから面白くない事もある様です。
警戒心が薄くて貪欲過ぎるのか、元々魚影が少ない本州では釣れ過ぎて増々少なくなっているかもしれないと、釣りファンの間でも懸念する声が上がるぐらいです。
食べ方
オキナメジナは本州であまりお目にかからないので、磯臭いと食用としては首を捻る人もある様です。
しかし造りやカルパッチョの生食はもちろん、煮物、汁物、揚げ物、焼き物とどんな料理でも美味しく食べられます。
ただ、焼き魚では身が固くなり過ぎることがあると敬遠する人もいます。
磯臭さが気になるなら、捌く時に内臓を傷つけない様にするのがポイントです。
そして腹腔などを良く水洗いします。
この処理は新鮮なうちにするほど良いので、釣りで上がったものであれば、生きている内に活〆(血抜き)して内臓を取ってしまうのが最も良い方法です。
まとめ
釣りの世界では、釣り人なら誰もが知っているメジナの中で、オキナメジナはデキル兄弟の中で一人取り残されたちょっと可哀そうな外れ者の存在の様です。
メジナ釣りのブログを見ていると、大テーマを「沖縄でもグレ(メジナ)がいる!!」としている記事があるほどですから、メジナ釣りの中では決してメインではないのです。
食用としてもクエスチョンマークが付く事もあるのですが、本州で獲れる事が少ないので食べ慣れていないだけだと思われます。
食べてみたら一級品の美味さだったという評判も見られますので、一度食べてみたいものです。