皆さんはアカメバルという魚をご存知でしょうか?
単にメバルという名の魚であれば、ご存知の方も多いかも知れません。
しかし、アカメバル、それに加えてシロメバルとクロメバルという名の魚がいると聞けば、よく知らないという方も多いかも知れません。
今回は、そんなアカメバルの特徴や生態とそれに関わる魚たちについてご紹介いたします。
アカメバルの基本情報
学名 | Sebastes inermis |
英名 | Japanese rockfish |
分類 | スズキ目メバル科メバル属 |
分布・生息域 | 北海道南部~九州、太平洋北西部 |
大きさ | 20~30cm程 |
分類
アカメバル(Sebastes inermis)はスズキ目メバル科メバル属に属する海水魚です。
メバル科の魚は従来、外見的な特徴からカサゴ目フサカサゴ科に分類されていましたが、近年の研究により、スズキ目に移されて独立したメバル科を設ける見直しが行われました。
メバル科にはカサゴやユメカサゴ、キチジなども含まれるものの、大半の種はメバル属に含まれます。
メバル属は4種が北部大西洋、1種が南部太平洋と南部大西洋に分布するものの、大半の種が北部太平洋に分布しています。
特にアメリカのカリフォルニア州沿岸では、全体のおよそ半数に当たる54種が確認されています。
アカメバルは従来、単にメバルとしてシロメバルとクロメバルと共に1種の魚として扱われていましたが、2008年に遺伝子の解析によって3種に分けられることが明らかになりました。
最近の出来事ですので、この分類を認知していない方も多く、世間一般ではまだ3種をまとめて単にメバルと呼ばれていることが多いのが実情です。
特徴
アカメバルの体長は20~30cm程度で、最大35.9cmの個体の記録があります。
体型は楕円形で側扁していて、目が大きいのが特徴。
また下顎は上顎よりやや長く、胸鰭が特に大きく発達します。
アカメバルの体色は、明るい褐色や淡い褐色、暗赤色などで、全体的に赤みがかつていて、腹部が白っぽい個体が多く見られます。
体側面には不明瞭な横帯がいくつか見られます。
最近まで同種とされていたシロメバルやクロメバルとは外見が酷似していて、体色に個体差が大きいために、見分けるのは困難です。
胸鰭や臀鰭の軟条数、有孔側線鱗数などで総合的に判断されます。
生態
アカメバルは太平洋北西部に分布する魚で、北海道南部から九州にかけてと、朝鮮半島南部の沿岸で見られます。
ほぼ日本近海固有の魚と言えるでしょう。
アカメバルは沿岸の浅い海の岩礁に生息していて、特に海藻の多い藻場を好みます。
あまり海底には留まらず、中層付近を遊泳していることが多く、小さな群れをなします。
特に垂直に切り立った岩場では、ホバリングするかのように立ち泳ぎする姿を見せます。
アカメバルは肉食性で、エビやカニなどの甲殻類、貝などの軟体動物、ゴカイのような多毛類、そして小型の魚を捕食します。
胎生魚として知られていて、冬季に交尾した雌は体内で孵化した稚魚を出産します。
美味しい春告げ魚
アカメバルは古くから日本人に親しまれてきた食用魚で、春が旬であることから、春告げ魚という雅称でも呼ばれています。
水産上の重要種で、定置網や刺し網で漁獲される他、釣りの人気対象魚にもなっていてよく獲られています。
白身魚で、刺身や塩焼き、煮つけなどに調理されます。
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観たい時は?
アカメバルは水族館でも飼育展示されることがあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、かごしま水族館、須磨海浜水族園、鴨川シーワールド、マリンピア日本海など、全国の18ヶ所の水族館で飼育されています。
最後に
春告げ魚と呼ばれるほど、日本人に親しまれ、よく食卓にも上がってきたアカメバル。
しかし、それほど身近な魚の分類が、ごく最近まであやふやであったことに、生物の多様性の奥深さを感じさせられます。
皆さんももしメバルを釣り上げる機会があれば、それがアカメバルなのかシロメバルなのかクロメバルなのか、一度調べてみましょう。