皆さんはフエヤッコダイという魚をご存知でしょうか?
一度見たら忘れられないような風変わりなその姿は、たとえ名前は知らなくてもどこかの水族館やサンゴ礁の魚の映像などで見たことがある方もいるかも知れません。
今回は、そんなフエヤッコダイの特徴や生態についてご紹介いたします。
フエヤッコダイの基本情報
学名 | Forcipiger flavissimus |
英名 | Longnose butterfly fish |
分類 | スズキ目チョウチョウウオ科フエヤッコダイ属 |
分布・生息域 | インド洋や太平洋の熱帯・亜熱帯海域 |
大きさ | 18cm程 |
分類
フエヤッコダイ(Forcipiger flavissimus)はスズキ目チョウチョウウオ科フエヤッコダイ属の海水魚です。
チョウチョウウオ科は、サンゴ礁に生息して様々な色彩と形態の種が含まれるグループですが、その中でもフエヤッコダイ属の魚は特異な姿をしています。
フエヤッコダイ属は従来、フエヤッコダイとオオフエヤッコダイの2種が知られていましたが、最近になってインドネシアで3番目の種であるForcipiger wanai(和名なし)種の存在が明らかとなり、2012年に新種として記載されました。
特徴
フエヤッコダイの体長は18cm程度で、最大22cmに達した個体の記録があります。
左右に平たく側扁した、体高の高い体型はチョウチョウウオ科の魚全般に共通する特徴ですが、フエヤッコダイが特異なのは、体高の半分以上に達する細長い吻を持つことです。
また、体に比してとても大きな胸鰭を持っており、背鰭にも発達した棘が見られます。
フエヤッコダイの体色は全体が鮮やかな黄色ですが、頭部は黒くなっており、吻部の下側は白色です。
そして尻鰭にのみ黒色の斑があります。
同属のオオフエヤッコダイとはとてもよく似ているのですが、オオフエヤッコダイの方が吻が長く、背鰭の棘数が1つ少ないことなので区別できます。
生態
フエヤッコダイは、インド洋と太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布している魚です。
西は紅海や東アフリカ沿岸から、西はハワイ諸島を越えてバハカリフォルニアやガラパゴス諸島まで。
北は南日本沿岸から、南はロードハウ島までで知られています。
国内では相模湾以南の太平洋側や琉球列島、小笠原諸島で見られます。
フエヤッコダイの生息が確認されているのは水深2~145mのサンゴ礁や岩礁です。
単独か数匹の小さな群れを作って暮らしていて、海底洞窟の天井付近では逆さになって泳いでいるユニークな姿が観察されています。
フエヤッコダイの餌は藻類から、ゴカイ類や甲殻類のような底生の小動物までと幅広く、雑食性。細長い口は、岩の隙間に隠れた小動物を捕食するために発達したものでしょう。
フエヤッコダイの繁殖については詳しいことは分かっていませんが、雄と雌のペアで行動する姿が観察されています。
観賞魚としてのフエヤッコダイ
フエヤッコダイは比較的小さく、鮮やかな黄色い体色もあってか、生息数の多い沖縄でも食用にされることはまずありません。
ただし、そのユニーク姿から、観賞魚としてはとても人気があります。
雑食性で、チョウチョウウオの仲間でも飼いやすいことがアクアリストを惹きつけているようです。
当然のことながら水族館でもよく飼育展示される魚で、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年の時点で、沖縄美ら海水族館、海遊館、八景島シーパラダイス、アクアマリンふくしまなど、全国の25ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
フエヤッコダイは、スズキ目チョウチョウウオ科フエヤッコダイ属の海水魚です。
一度見たら忘れられないようなユーモラスな姿と、美しい体色を持った魚です。
この風変わりな魚は、あまりに独特な形をしているがゆえに、水族館の水槽の中で他の魚たちと混じって展示されていても、すぐに見つけることができるでしょう。
食べることこそないものの、水族館では珍しくないフエヤッコダイ。
ご覧になる機会に恵まれましたら、一度その姿をじっくりと観察してみてはいかがでしょうか?