皆さんはツチホゼリという魚をご存知でしょうか?
ツチホゼリは熱帯海域に生息する大型のハタ科の魚で、とても美味しい魚なのですが、漁獲量が非常に少なく、市場にもほとんど出回らないために、知名度が低いままになっています。
今回はそんなツチホゼリの特徴や生態についてご紹介いたします。
ツチホゼリの基本情報
学名 | Epinephelus cyanopodus |
英名 | Speckled blue grouper |
分類 | スズキ目ハタ科マハタ属 |
分布・生息域 | 房総半島以南 /西部太平洋 |
大きさ | 50~70cm程度 |
分類
ツチホゼリ(Epinephelus cyanopodus)はスズキ目ハタ科マハタ属に属する海水魚です。
ハタ科は世界の熱帯海域から温帯海域にかけて分布し、およそ450種が知られているグループです。
硬骨魚類として最大種とされるタマカイや、高級食用魚として有名なクエなどの大型のハタ類に加えて、サンゴ礁で群れをなす色鮮やかなキンギョハナダイといった小型のハナダイ類など、大小様々な大きさの種を含み、雌性先熟の性転換を行うことでも知られています。
その中でもマハタ属は最大種タマカイなど、多くの大型種を含む89種が属しています。
特徴
ツチホゼリの体長は50~70cm程度で、最大122cmの個体の記録があります。
体型は側扁していて、ハタ類の中でもとりわけ体高が高いのが特徴。
口が大きく、上顎の後ろは眼の後縁まで達し、尾鰭の端はまっすぐで切れ込みがほとんどなく、胸鰭と腹鰭はほぼ同じ長さになります。
体色は灰色で、体側面全体に小さな黒色の斑点が散在しています。
体色には個体変異が大きく、尾鰭など各鰭が黄色い個体も存在しています。
そういった個体は以前は別種とされ、区キビレツチホゼリ(Epinephelus flavocaeruleus)の種名が与えられていましたが、現在では同一種とされています。
生態
ツチホゼリは西部太平洋の熱帯・亜熱帯海域に分布しており、北は南日本から南はオーストラリアのクインズランド州まで、東はフィジーやミクロネシアまでで知られている他、最近ではトンガからも記録があります。
国内では房総半島以南の太平洋側から琉球列島や小笠原諸島で見られます。
ツチホゼリは主に沿岸の浅い海のサンゴ礁に生息していますが、水深150mと深い海域でも記録があります。
海底から数メートル離れた中層域を泳いでいることが多く、小型の魚類やエビやカニなどの甲殻類、タコなどの頭足類を捕食する肉食魚です。
砂底を好み、海底に穴を掘って隠れる習性があることが、ツチホゼリという和名の由来となりました。
食べる時はシガテラに注意!!
ツチホゼリは、食用魚として評価の高いハタ科の大型魚であるため高値で取引されますが、主に熱帯海域に分布する魚であるため、沖縄や小笠原諸島以外ではほとんど漁獲されません。
釣りや定置網、刺突網を用いて捕らえられますが、沖縄や小笠原諸島であっても漁獲量は非常に少なく、食用魚としての知名度は低いままです。
調理に当たっては、刺身や煮つけ、味噌汁などにされます。
ただし、熱帯海域に生息する大型の肉食魚であるため、シガテラ中毒には注意しなければなりません。
実際、ニューカレドニアではツチホゼリによるシガテラ中毒の発生事例があります。
ツチホゼリは大型魚であるために個人での飼育は難しいのですが、アクアリストの中には飼育を行っている人もいます。
水族館でもツチホゼリは飼育されることがあり、生息域であるサンゴ礁を再現した水槽や、大型魚が集められた巨大水槽で展示されることが多いようです。
人に慣れたツチホゼリは愛嬌があり、餌をねだる人懐っこい姿を見せてくれる飼育個体もいます。
まとめ
ツチホゼリは、スズキ目ハタ科マハタ属に属する海水魚です。
市場にはほとんど出回らず、食卓で目にする機会もほとんどないツチホゼリですが、ハタ科らしい美味しい白身魚です。
もしご賞味する機会があれば、貴重な経験として、その旨みを堪能されることをお勧めします。