皆さんはギチベラという魚をご存知でしょうか?
ギチベラは一見すると、あまり特徴のない魚です。
しかし、餌となる小魚を前にすると、びっくりするほど口が長く伸びて、ぱっくりと食べてしまう驚きの魚なのです。
今回はそんなギチベラの特徴や生態についてご紹介いたします。
ギチベラの基本情報
学名 | Epibulus insidiator |
英名 | Slingjaw wrasse |
分類 | スズキ目ベラ科ギチベラ属 |
分布・生息域 | 紀伊半島以南 /インド洋・中・西部太平洋 |
大きさ | 30cm程度 |
分類
ギチベラ(Epibulus insidiator)はスズキ目ベラ科ギチベラ属に属する海水魚です。
ベラ科は世界の熱帯海域から温帯海域にかけて500種余りが知られているグループで、体長10cm程度で掃除魚として知られているホンソメワケベラから、体長2mに達してナポレオンフィッシュの愛称で親しまれるメガネモチノウオまで、大小様々な種類が含まれています。
その中でもギチベラ属は長年ギチベラ1種のみが知られていましたが、2008年にフィリピンからインドネシア、パプアニューギニアにかけての海域に分布しているEpibulus brevis(和名なし)種が記載されたことで、2種となりました。
特徴
ギチベラの体長は30cm程度ですが、最大で54cmの個体の記録があります。
体型は強く側扁していて、体高が高く、長く発達した腹鰭の後端が臀鰭にかかっているのが特徴。
また、尾鰭の上下が長く伸び、口が筒状になっています。
この口は普段縮めていますが、餌を捕食する時には著しく長く伸ばすことができます。
そのため、口を縮めている際、下顎の後縁は鰓蓋の後下にまで達しています。
ギチベラの体色は変化が多く、淡い黄色から茶褐色、暗褐色、複数の色が混じるパターンなど、変異に富むと言っていいでしょう。
生態
ギチベラはインド洋から中・西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、西は紅海や南アフリカから東はハワイ諸島にかけて、北は南日本から南はニューカレドニアまでで知られています。
国内では紀伊半島以南の太平洋側から琉球列島にかけてで見られますが、特に数が多いのは琉球列島以南の海域です。
ギチベラは水深1~42mの浅い海に生息しており、サンゴ礁や岩礁に暮らしています。
ギチベラは、同じベラ科の多くの種類と同様に肉食魚で、小型の魚類や、エビやカニなどの甲殻類を捕食します。その際、異様なほど口が前へ伸び、時としてその長さは体長の半分にも達するほどです。
そんなギチベラの口は、捕食を目的として進化した驚きの秘密兵器と言えるかも知れません。
人との関わり
ギチベラは市場に流通することはあまりありませんが、釣りなどで漁獲されることは珍しくなく、数の多い沖縄県や奄美諸島では食用に供されます。
透明感のある白身で癖がなく、煮つけなどに調理されます。
ギチベラは観賞魚としてアクアリストの間で飼育されることがありますが、通常でも30cmほどに成長する中型魚であるため、相応の大きな水槽を用意する必要があります。
またギチベラは水族館で飼育されることもあり、須磨海浜水族園や葛西臨海水族園で展示されたことがあります。
主にサンゴ礁を再現した水槽において、他のサンゴ礁に暮らす魚たちと一緒に展示されることが多いようです。
まとめ
ギチベラは、スズキ目ベラ科ギチベラ属に属する海水魚です。
餌を見つけると、びっくりするほど口が長く伸びるギチベラ。
一瞬のことであり、その場面を見るのはなかなか難しいのですが、過去には水族館でその決定的瞬間が撮影されたこともあります。
ですから、チャンスはゼロではないわけで、もし水族館でギチベラが展示されているのを見つけることがあれば、捕食行動に移らないか注意深く観察してみましょう。