皆さんはギンガメアジという魚をご存知でしょうか?
ギンガメアジは名前の通り、全身に銀紙を張ったかのように美しい銀色に輝く魚で、熱帯海域に分布しているアジの仲間です。
今回は、そんなギンガメアジの特徴や生態についてご紹介いたします。
ギンガメアジの基本情報
学名 | Caranx sexfasciatus |
英名 | Bigeye trevally |
分類 | スズキ目アジ科ギンガメアジ属 |
分布・生息域 | 青森以南 / インド洋、太平洋 |
大きさ | 60cm程 |
分類
ギンガメアジ(Caranx sexfasciatus)はスズキ目アジ科ギンガメアジ属に属する海水魚です。
アジ科は全世界の熱帯・温帯海域に分布する中型から大型の肉食魚のグループで、およそ150種全種が海生です。
一般に遊泳力が高く、マアジやシマアジ、ブリ、イケカツオなどが属しており、水産上重要な食用魚が多く含まれています。
ギンガメアジ属はインド洋と太平洋、大西洋の熱帯・亜熱帯海域に分布しているグループで、これまでにギンガメアジを初めとした18種が知られています。
特徴
ギンガメアジの体長は通常60cm程度ですが、80~90cmに達することは珍しくなく、最大で120cmの個体が記録されています。
ギンガメアジの体型は長い楕円形で、左右に強く側扁していて、主上顎骨後端が眼の後縁を越えるのが特徴。
臀鰭の前側には二つの離棘があって、第二背鰭と臀鰭の前部が鎌状に発達しています。
また、側線は胸鰭上方で湾曲しているものの、後方へ行くに従って直走しています。
ギンガメアジの体色は銀色で、背部が暗い青緑色や褐色を帯びており、鰓蓋の上部に小さな黒色斑紋が見られます。
また、幼魚は尾鰭の後縁が黒く縁取られており、かつ不明瞭な黒色の横帯が6~7本存在します。
同属で生息海域が重なることが多いロウニンアジとよく似ていますが、ギンガメアジは体型がより細いこと、鰓蓋付近の黒色斑紋で区別が可能です。
和名は、銀色の体表が銀紙を張ったように見えることから、「銀紙鯵」と呼んだ、長崎県での呼び名に由来しています。
高知県ではギンガメアジのことをナガエバ(長江場)と呼んでおり、以前はこちらを和名としていた時期がありました。
生態
ギンガメアジはインド洋から太平洋の熱帯・亜熱帯海域に分布している魚で、西は紅海や東アフリカから東はハワイ諸島を越えて、東部太平洋沿岸のカリフォルニア半島からエクアドルやガラパゴス諸島まで、北は南日本や小笠原諸島から南はオーストラリアやニューカレドニアまでで知られています。
海水魚の多くの種が、西部太平洋と東部太平洋の間で分断されていることを考えると、ギンガメアジの極めて広大な分布域は特筆に値するでしょう。
国内では、津軽海峡から九州までの太平洋岸、若狭湾から九州までの日本海岸、
そして小笠原諸島や琉球列島の近海で見られます。
ただし、本土沿岸では成魚は少なく、体長30cm程度までの若い個体がほとんどです。
ギンガメアジは水深0~146mの、比較的沿岸に近いサンゴ礁や岩礁の周辺に生息している他、内湾にもよく侵入します。
単独で暮らす個体も存在しますが、通常は大きな群れを作って暮らしており、主に夜間に活発に活動します。
ギンガメアジは肉食性で、カタクチイワシなどの小型の魚や、エビやカニなどの甲殻類、イカなどを貪欲に捕食します。
産卵期は4~7月で、産むのは分離浮遊卵。
誕生した稚魚はしばらく流れ藻につくなどの浮遊生活を送った後、体長3cmほどの幼魚に成長すると浅い内湾へ侵入し、汽水域でもよく見られます。
淡水への耐性が強く、川を遡上して純淡水域に現れることも珍しくありません。
アジ科の魚で、これほど淡水域な適応できる魚は、ギンガメアジが唯一です。
ハワイ諸島では同属のカスミアジとの自然界での交雑個体が報告されています。
食べて美味しい見て美しい
ギンガメアジは定置網や釣りなどで漁獲されており、一般的な食用魚としても利用されています。
ただし、熱帯海域を中心に分布する魚であるために、産地が西日本に偏っており、関東の市場に入荷することはほとんどなく、東日本ではあまり知られていない魚です。
九州や四国の市場では珍しくない魚であり、沖縄では盛んに漁獲されて、大量に出回っています。
ギンガメアジの身は透明で血合いが赤く、皮がやや厚めです。
新鮮な魚は刺身でいただく他、塩焼きや煮つけ、唐揚げなどに調理されており、味に関しては高い評価を受けています。
更に釣り人の間ではギンガメアジは、近縁のアジ科の大型魚であるロウニンアジやカスミアジと共に「メッキ」と呼ばれ、釣りの対象魚として高い人気を得ています。
ただし、熱帯海域に分布する大型の肉食魚であるため、シガテラ毒には十分な注意が必要です。
またサンゴ礁海域に生息するギンガメアジは、大型で迫力がある上、群れで泳ぐために、スキューバダイビングにおける観察対象としても人気があります。
ギンガメアジは水族館で飼育展示されることもあり、日本動物園水族館協会のデータベースによると、2019年時点で沖縄美ら海水族館、海遊館、京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所水族館、マリンピア日本海など、全国の多くの水族館で飼育されています。
最後に
ギンガメアジは幼魚の時期に黒潮の流れに乗って本州の沿岸にも多く現れます。
しかし、熱帯海域の魚であるために、冬季の海水温の低下に耐えられず全滅してしまう死滅回遊魚として知られていました。
しかし、近年は地球温暖化の影響で、冬季でも海水温が下がり切らず、また都市部の沿岸では工場排水の影響で海水温の高い場所があり、冬の時期を生き延びて大きく成長するギンガメアジが現れ始めています。
今までは南日本で主に食べられていたギンガメアジでしたが、今後は全国どこでも食卓に上がる魚になるのかも知れません。