ギンユゴイは、浅瀬や潮だまりなどによくいる魚なので、磯釣りをする方には名前は知らなくてもよく見かけるなじみのある魚です。
今回は、「コイ」と呼ばれるけれど、鯉ではない「ギンユゴイの特徴や生態」について、ご紹介します。
ギンユゴイの基本情報
学名 | Kuhlia mugil |
英名 | Barred flagtail |
分類 | スズキ目ユゴイ科ユゴイ属 |
分布・生息域 | 茨城県以南、インド洋、太平洋 |
大きさ | 20㎝程 |
ギンユゴイは、ユゴイ科の海水魚です。
名前に「コイ」とつきますが、スズキ目の魚になります。
名前の由来
ユゴイは本来は熱帯海域に多くいますが、その昔、静岡県伊東市にあった「浄ノ池」という池に多く生息していました。
この池は底から常に温泉が湧いていて、水温が年間を通して26~28℃ほどに保たれていたそうで、淡水の池なのに、いろいろな種類の南方系の海水魚や汽水魚が生息していました。
その中にたくさんいた魚を「湯鯉(ユゴイ)」と呼びました。
鯉ではないけれど、池にいるから鯉とつけたのでしょう。
しかし、さすが温泉で有名な伊東市ですね。
ただ、残念ながら、今はこの池は存在していません。
ギンユゴイはこのユゴイの仲間で、体の色が銀色のため、ギンユゴイという名前がつきました。
八丈島の乙千代ヶ浜(おっちょがはま)の海水プールでは、かなりの数のギンユゴイが泳いでいますが、やはりめずらしくない魚だそうで、地元ではオジロと呼ばれています。
生息域と生態
ギンユゴイは、亜熱帯から熱帯海域に広く分布しています。
インド洋では、紅海を含むアフリカ東海岸からオーストラリア北部沿岸まで、また、太平洋でも西太平洋から東太平洋まで幅広く生息しています。
しかし、イースター島やハワイ諸島などには分布していないとされています。
日本では、本州でも見られますが、茨城辺りから南になります。
茨城から九州南岸の太平洋沿岸、対馬や九州北岸・西岸にも生息しています。
ハワイ諸島にはいないとされるギンユゴイですが、日本では、屋久島、琉球列島、小笠原諸島といった島にも生息しているので、おもしろいですね。
また、沿岸の浅い岩礁域に生息し、水深3~18メートル程度のところで見られます。
日本の沿岸では、3~4センチメートルの幼魚が潮だまり(タイドプール)でよく泳いでいるのが見られます。
ユゴイの仲間の多くは、成魚は河川淡水域で上流から下流まで広く見られる淡水魚の1つなのですが、幼魚期を海での生活に依存しています。
一方、ギンユゴイは、その一生を海で過ごす珍しいタイプのユゴイです。
体の特徴
ギンユゴイと呼ばれるだけあって、体色は銀白色、美しいメタリックシルバーで、背部は少し青色や黄色を帯びています。
海中では、少し地味に見える色なのですが、尾びれにゼブラ模様が入っていて目を引きます。
尾びれは上下ふたまたに分かれていて、5本の黒色の帯が入っているため、海外では、ファイブバーフラッグテイルと呼ばれています。
体は長楕円形をしていて、体高はやや高く、体に比べて眼が大きいのも特徴です。
口は受け口で、目の中心位置より高いところにあります。
背びれは中央辺りで深く切り込みが入っていて、棘もしっかりとしています。
平均的な大きさは20センチメートルを超えず、潮溜まりや岩礁域に生息し、プランクトンを捕食していますが、中には30~40センチメートルまでに成長するものもいて、こうした大型のギンユゴイは甲殻類や小魚なども食べます。
食べられる?
ギンユゴイは、揚げ物などの他、塩漬けや干物などにもなっていて、食用として利用されてはいます。
ただ、味は淡白で絶賛するほどおいしいわけでもなく、たくさん獲れるので水産的にはあまり重要視されていません。
むしろ、他の魚を獲るためのエサにされることが多いようです。
まとめ
ギンユゴイは、スズキ目ユゴイ科ユゴイ属の海水魚です。
ギンユゴイは、釣れてもあまり嬉しくなく、タイドプールなどにたくさんいるので、普段は気にも留めない魚ですが、今度じっくりと眺めてみてください。
体色と尾びれの模様はとてもきれいでかわいらしい魚です。