皆さんはアマノガワテンジクダイという魚をご存知でしょうか?
アマノガワテンジクダイは独特の細長い鰭に、白と黒の二色の対比が鮮やかな体色の、とても目立つ魚です。
人によっては星形とも評される、奇妙で美しい魚。
今回は、そんなアマノガワテンジクダイの生態と特徴についてご紹介いたします。
アマノガワテンジクダイの基本情報
学名 | Pterapogon kauderni |
英名 | Banggai cardinalfish |
分類 | スズキ目テンジクダイ科プテラポゴン属 |
分布・生息域 | インドネシア |
大きさ | 5~8cmほど |
分類
アマノガワテンジクダイ(Pterapogon kauderni)はスズキ目テンジクダイ科プテラポゴン属に属する海水魚です。
世界の熱帯・亜熱帯海域のサンゴ礁を中心に分布するテンジクダイ科には姿形の美しい種類が多く含まれていますが、その中でもアマノガワテンジクダイは特に洗練された美しさを持つと言えるでしょう。
ただし、日本近海には分布していないため、和名ではなく学名のプテラポゴン・カウデルニィーの名で呼ばれることが多い魚です。
また英名のバンガイカーディナルフィッシュの名が使われることもあります。
特徴
アマノガワテンジクダイの体長は5~8cmで、最大8.6cmの個体の記録があります。
体型は楕円形で側扁していて、第一背鰭、第二背鰭、腹鰭、臀鰭、尾鰭の全ての鰭が細長く伸びているのが特徴。
アマノガワテンジクダイの体色は白地に、はっきりとした三本の黒い横帯が入ります。
そのうちの二本は第一背鰭と腹鰭、第二背鰭と臀鰭を通っていて、尾鰭も黒くなります。
ただし、各鰭には白い水玉模様があり、とても複雑な模様と言えるでしょう。
その模様と、特異な体型が相まってテンジクダイ科の中でも突出した美しさを誇ります。
生態
アマノガワテンジクダイはインドネシアの、バンダ海とモルッカ海にまたがるバンガイ諸島の周辺海域のみから知られている、とても分布範囲の限られた魚です。
ただし、人為的に放流されたと思われる個体群が同じインドネシアのバリ島やマレーシア、スリランカなどの沿岸で発見されています。
アマノガワテンジクダイは水深16mまでの海域から知られていますが、通常は水深1~2mのごく浅いサンゴ礁や岩礁に生息します。
夜行性で知られていて、昼間は枝サンゴの間や、ガンガゼの棘の間などに隠れていて、夜になると群れで活動し、小型の甲殻類、特にカイアシ類を好んで捕食することが知られています。
多くのテンジクダイ科の魚と同様、アマノガワテンジクダイも親が子を一定期間口の中で育てるマウスブルーダーと呼ばれる習性を持っており、夏季の繁殖期になると雄雌のペアで群れを離れて産卵を行います。
産まれた卵は、雄が口の中に収容して孵化するまで保護します。
一方、産卵を終えた雌は別の雄と再びペアを組んで新規に繁殖を行います。
観賞魚として絶大な人気のアマノガワテンジクダイ
アマノガワテンジクダイは分布範囲が限られていることと、小型で美しい姿をしていることから、通常は食用魚として利用されることはありません。
一方で観賞魚としては、突出した美しい姿形から絶大な人気を誇る魚です。
多くのアクアリストがこの魚を飼育することを望み、生息海域では盛んに採集が行われ、世界中へ生体の輸出が行われました。
乱獲の結果、現地ではアマノガワテンジクダイの個体数が減少しており、保護のためにワシントン条約附属書IIに記載されて商取引が制限されています。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいては絶滅危惧種(EN)の評価を受けています。
一方で、人の手によって意図的に持ち込まれたと思われる個体が、分布域外の各地で繁殖・定着していることが確認されていて、外来種としての一面も持ち合わせた魚と言えるでしょう。
アマノガワテンジクダイは水族館でも飼育展示が行われていて、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年時点で、しまね海洋館アクアス、海遊館、鳥羽水族館、サンシャイン水族館など、全国の24ヶ所の水族館で飼育されています。
アマノガワテンジクダイは通販で買える?
アマノガワテンジクダイは楽天などの通信販売で購入することも可能です。
在庫状況は変動しますので、下記のバナーから楽天市場での検索結果をチェックしてみてください。
最後に
アマノガワテンジクダイは、その独特の姿形が星形とも評され、和名とあいまって各地の水族館で七夕のイベントとして展示されることもある魚です。
このように親しみ深い魚である一方で、本来の分布海域現地では深刻な絶滅の危機に晒されると共に別の海域では外来種として脅威をもたらしているという、あまりにも複雑な問題を抱え込んだ存在でもあります。
私たちはアマノガワテンジクダイの洗練された美しさに魅了される一方で、その背景に横たわる様々な問題についても考えなければならないのではないでしょうか。