タ行 フグ目 フグ科

トラフグ ~体が膨らむ秘密。生態や特徴について

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トラフグを知らない人はいないでしょう。

そう、怒ると真ん丸に身体が膨らんで、薄造りや鍋やひれ酒にして美味しい高級魚で、そしてその猛毒に当たって時々人が死んでしまう事もある怖いあの魚です。

でもそれ以外にトラフグの事を何か知っていますか?

知ってる様で知らないトラフグの生態や特徴についてご紹介させていただきます。

 

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トラフグの基本情報

トラフグ

学名 Takifugu rubripes
英名 Japanese pufferfish
分類 フグ目フグ科トラフグ属
分布・生息域 北海道以南、太平洋北西部
大きさ 60~70cmほど

 

生息域

太平洋北西部から日本列島沿岸を経て、黄海や東シナ海にかけて生息しています。

幼魚は湾口や干潟、また河口付近の汽水域など沿岸部の浅い海にいますが、成長するに従って外洋に泳ぎ出し回遊を始めます。

 

特徴

トラフグ

体色は腹部の白と背部の黒のツートンカラーが基本色で、背部の黒には微妙な濃淡の紋が入っています。

特に胸鰭の直ぐ後ろにある、白く縁取られたひと際大きな黒い紋が特徴的です。

 

体長は成魚で60~70cm、大きいものだと80cmを超えるフグの仲間の中でも大型の種類です。

フグの仲間は世界で約100種類がおり、日本近海では50種ほどが生息していて、そのうち食用になるのは22種類です。

 

背部から腹にかけて細かい棘が密生しており、フグ料理店の軒先に吊るしてあるトラフグのフグ提灯に触るとザラザラチクチクしているのはその為です。

フグの皮は三層になっており、フグ提灯に利用されるのは最も外側の皮膚で「鮫皮」、二層目が「とうとうみ」と呼ばれ、身そのものにもさらに一枚、丁度ミカンの身を包んでいる薄皮の様な「身皮」が身を包んでいます。

フグ料理人にとって毒のあるフグを調理するのは気を使いますが、実は最も手間がかかるのがこの皮の調理だといいます。

 

ザラザラの表皮が「鮫皮」で身を直接包んでいる皮が「身皮」は分かりますが、その間の皮を「とうとうみ」と呼ぶのは何故でしょう?

それはミカワ(三河)の隣はトウトウミ(遠江)だからだとか・・。

 

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体が膨らむ秘密

トラフグ

フグが身体を膨らませるのは外敵に対する防御が目的です。

弱肉強食の自然界では大きさ=強さがもっとも判り易い法則なので、身体が大きいほど攻撃捕食される可能性が低くなるわけです。

喧嘩する猫が背中の毛を逆立てて背伸びしながら、相手に対して横向きになるのもこの法則故です。

 

フグが身体を膨らませるメカニズムは、胃の一部が変化した膨張嚢という器官に水や空気を吸い込む事で行われます。

ある研究によると、体長20cmのフグが約1リットルの水を飲み込んで体重が4倍になったといいます。

 

フグを釣り上げた事のある人は水中から出た後に膨らむフグを知っているでしょう。フグは水だけではなく空気でも膨らみます。

フグの身体の筋肉は強靭で、水・空気を吸い込んだ後に胃や腸の出入り口をその強い筋肉で閉じるのです。

また身体の体積を大きく変化させる為にフグには内臓を守るべき肋骨がありません。

その肋骨の代わりとしても強い筋肉が役立っています。

食感の良いフグのお刺身はこの強靭な筋肉によるものです。

因みにフグのお刺身が透き通る様な薄造りなのは、通常の刺身の厚みでは固すぎるからなのです。

 

身体を膨張させる防衛方法を身に付けたフグ、しかしそれが為に素早く泳ぎ回る為の体形ではなくなりました。

 

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毒の秘密

フグが猛毒を持つ様になったのは、その体形を補完するさらなる防衛策だったのではないかとも考えられますが、そうすると表皮に毒がない事に説明がつきません。

防衛目的の毒は皮膚や鰭の先端など、外敵が真っ先に触れ易い所に存在するのが普通です。

毒の目的として、卵巣に毒が多いのは生殖に関する性フェロモンに関係しているのではないかなどの説もありますが、フグ毒の本当の目的は今のところ解明されていません。

 

この毒の興味深いのはフグの体内でその毒が作られていない事です。

フグ毒の主成分はテトロドトキシンで、有毒プランクトンやある種の細菌が生産したものです。

これらプランクトンなどを餌とする貝類やヒトデをフグが食べる事で、その毒成分がフグ体内に蓄積濃縮される事が近年分かってきました。

 

ですからこの毒成分を含まない餌を与える事で、毒の無い養殖トラフグが生産されていますが、テトラドトキシンを含まない給餌では固体同士の噛み合いが頻発する事も判明するなど問題も残っています。

 

フグの毒は人の致死量僅か2mg、青酸カリの850~1000倍という猛毒で、人の細胞にあるナトリウム・チャンネルというタンパク質と結合して呼吸困難を発症させます。

なのに体内にこの猛毒を溜めているフグ自身は中毒を起こさないのがまた不思議で面白いところです。

これはナトリウム・チャンネルの構造が人と違いテトラドトキシンと結び付かないからなのです。

 

毒のあるフグを調理には、各都道府県の条例によって許可される免許・資格が必要です。

しかもこれらの免許・資格は都道府県毎の発行なので、例えば○○県で許可を受けた人でも××府では調理ができません。

××府でまた新たに許可を得る必要があります。

 

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産卵回帰性

トラフグ

鮭が川の上流で孵化し、下流に向かって泳ぎながら成長して、海で成魚となると再び生まれ故郷の川に戻って来て産卵する事は周知の事で、これを産卵回帰性といいます。

トラフグにもこの産卵回帰性のある事が最近の研究で明らかになってきました。

 

フグは湾口部・海峡など流れが早い水深10~50mの粗い砂礫の海底に産卵します。

日本の主な産卵場所は、

・日本海系(有明海、博多湾、若狭湾、八郎潟など)、瀬戸内海系(関門海峡、備讃瀬戸など)、伊勢湾・遠州灘系(伊勢湾口など)

の三系統に主に別れます。

 

10日ほどで孵化した稚魚は近辺の浅瀬で成長し、大きくなるに従って沿岸部から徐々に外海へと泳ぎ出して外洋に回遊し始めます。

日本海系では日本海から遠くは黄海や東シナ海へ、瀬戸内海系は豊後水道や紀伊水道から四国沖の太平洋へ、また伊勢湾・遠州灘系は紀伊半島から駿河湾にかけての太平洋を回遊し、雄は2年ほど、雌は3年程度で成熟し生まれた場所へ戻って来て産卵をします。

 

ちなみに、鮭が産卵後その一生を終えるのに対して、フグは再び回遊に出ては産卵に戻る事を繰り返し10年程度の寿命があります。

 

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おわりに

美味しい高級魚としてはよく知っているのに、何も知らなかったトラフグついて少し勉強してみました。

誰にでも馴染みがありながら、その実その生態や性質については学術的にもまだまだ分からない事が結構多い、実はとても奥の深いトラフグでした。

それでも近年徐々にその実態も解かり始め、産卵回帰性を利用して各地の産卵地で放流が盛んになったり、水槽やプールでの陸上養殖が開発されたりと、高値の花的なトラフグが今後庶民の味になる日が来るかもしれません。

今後の研究が進むのが楽しみですね。

 

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