皆さんはマゼランペンギンという鳥をご存知でしょうか?
単にペンギンと聞けば、知らない人はいないだろうと思いますが、そのペンギンにもいろんな種類が存在することは、意外と知らない人も多いのではないでしょうか?
マゼランペンギンは、ペンギンの中でも日本の動物園や水族館で飼育されることが多い種類の1つです。
今回は、そんなマゼランペンギンの特徴や生態についてご紹介いたします。
マゼランペンギンの基本情報
学名 | Spheniscus magellanicus |
英名 | Magellanic Penguin |
分類 | ペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属 |
分布・生息域 | 南アメリカ大陸(アルゼンチンやチリの南部沿岸) |
大きさ | 70cm、3.8kgほど |
マゼランペンギンの名は、太平洋と大西洋を結ぶマゼラン海峡を発見した冒険家のフェルディナンド・マゼランに由来しています。
マゼランの世界一周の航海の記録「最初の世界周航の報告書」にはマゼランペンギンについて記されており、これはペンギンについて記した世界初の記録です。
分類
マゼランペンギン(Spheniscus magellanicus)はペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属に属する鳥です。
ペンギンと言えば、飛ぶための翼を退化させて泳ぐための鰭と化し、胴体が垂直に立った、まさに海で泳ぐことに特化した独特の体型を持つ鳥だということは、多くの人がご存知のことでしょう。
ペンギンは現在、南半球から6属19種が知られていますが、化石記録から過去にはもっと多くの種類が存在していたことが明らかとなっています。
その中でフンボルトペンギン属は、フンボルトペンギン、マゼランペンギン、ケープペンギン、ガラパゴスペンギンの4種からなり、ペンギンの中では比較的高緯度の海域、つまり温暖な海域に分布していることが特徴です。
特にガラパゴスペンギンが生息するガラパゴス諸島は赤道直下に位置しています。
特徴
マゼランペンギンの体長は約70cm、体重は3.8kg程度で、同属のフンボルトペンギンやケープペンギンとほぼ同じです。
ペンギンの中では中型の種類と言えるでしょう。
体型も垂直に直立した動態に短い首、鰭と化した翼と、他の種類のペンギンと大差はありません。
体色は頭部から上が黒く、目元から首にかけて半円状の白い斑紋が入ります。
胸から腹部が白く、胸には2本の黒い帯が入ります。
同属のフンボルトペンギンやケープペンギンと体型も模様もとてもよく似ていますが、胸部の黒い帯が2本入るのはマゼランペンギンだけです。
生態
マゼランペンギンは南アメリカのチリの太平洋岸(南緯42度以南からホーン岬まで)とアルゼンチンの大西洋岸(南緯29度以南からフエゴ島まで)で繁殖する他、フォークランド諸島でも繁殖が確認されています。
特に保護区に指定されているアルゼンチンのプンタ・トンボが有名で50万羽ものマゼランペンギンが集結する営巣地として知られています。
繁殖期以外は外洋を群れで回遊しているために、ペルーやブラジルの沖合でも観察されることがあります。
餌はイワシのような小型の魚やオキアミ、イカなどで、獲物を追いかけながら時速25kmで泳ぐと言われています。
マゼランペンギンは秋の繁殖期になると営巣地に集まって、コロニーと呼ばれる大集団で営巣を始めます。
巣が作られる場所は森の中から草原、砂礫地など様々で、地上に作ることが多いのですが、穴が掘りやすい場所であればトンネルを掘って巣を作ることがあります。
一夫一妻でペアを組んで、普通は2個の産み、雌雄で協力して抱卵と子育てが行われます。
卵は約40日で孵化し、雛は2ヶ月程度で巣立ちにいたります。
マゼランペンギンの夫婦は絆が深く、一度ペアを組むと相手が亡くならない限り、生涯繁殖相手を変えないと言われています。
準絶滅危惧種のマゼランペンギン
マゼランペンギンの生息地の一部では、タンカーや商船などの事故による原油や重油の流出が起きており、個体数が減少している繁殖地が報告されています。
また開発による繁殖地の環境破壊、漁網による混獲被害も無視できません。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて、マゼランペンギンは準絶滅危惧種と評価されています。
観たい時は?
マゼランペンギンは温帯海域にも分布していて、比較的高温にも耐えられることから、動物園や水族館でよく飼育されるペンギンの1種です。
日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年時点で、長崎ペンギン水族館、須磨海浜水族園、鴨川シーワールド、上越市立水族博物館うみがたりなど、全国の17ヶ所の動物園と水族館で飼育されています。
特に上越市立水族博物館うみがたりではおよそ100羽の群れを飼育しており、マゼランペンギンの飼育数日本一を誇っています。
ちなみに同属のマゼランペンギン、フンボルトペンギン、ケープペンギンの間では雑種が生まれることがあるため、飼育下ではこれら3種のペンギンが同じ場所で飼育されることがないよう配慮がなされています。
まとめ
日本の動物園や水族館でも飼育されていることが多いマゼランペンギン。
高温への耐性が強いため、温度管理されていない屋外でも飼いやすいペンギンなのです。
そのため、同属のフンボルトペンギンやケープペンギンと並んで、日本人にとっても身近なペンギンと言えるのではないでしょうか?
もし動物園や水族館へ出かけた際、マゼランペンギンに出会える機会がございましたら、そういったことも思い起こしてみてはいかがでしょうか?