ニセクロナマコは、体長が20cmから30cm程に成長する中型のナマコで、亜熱帯系の海中の生物です。
ナマコと聞くと多くの人が不気味な印象を持つと思いますが、このニセクロナマコは正に不気味な印象を与えてくれるナマコです。
そこでこのニセクロナマコの生態や生息環境、クロナマコとの違い等について調べて見ましょう。
ニセクロナマコの生態と生息環境
学名 | Holothuria leucospilota |
英名 | Black sea cucumber / Sea cucumber |
分類 | 楯手目クロナマコ科クロナマコ属 |
分布・生息域 | 紀伊半島以南、インド洋、太平洋 |
大きさ | 20~30cm |
ニセクロナマコは亜熱帯地方の海域を中心に見られるナマコで、分類上は楯手目クロナマコ科クロナマコ属に属します。
日本では紀伊半島付近の海域より南の海域に多く見られ、太平洋沿岸やインド洋、更に南アフリカの一部の海域や中南米の太平洋沿岸部でも見る事が出来ます。
このニセクロナマコが主に生息している場所は、沿岸部に出来る潮だまりと呼ばれる場所で多く目にする事が出来ます。
潮だまりは、海の潮の満ち引きで出来る水溜まりの様になっている場所で、基本的にこの潮だまりの中の岩陰に隠れている場合が多いです。
ニセクロナマコの特徴
ニセクロナマコの最大の特徴は、見た目がグロテスクな黒い身体です。
背中側には非常に多くのイボイボが有りますが腹側には管足が密集しており、その管足を使う事で移動する事が出来ます。
更に判別し難い顔の先端部に有る口は下向きに付いております。
又、このニセクロナマコの特徴として特筆出来るのが毒を持っている点です。
ナマコの仲間には少なからず微量の毒を持つ物もおりますが、このニセクロナマコの毒は他のナマコに比べて強く、その為ニセクロナマコは食用にはなりません。
含まれる毒はホロツリンと呼ばれる毒で、体内に持つホロツリンの濃度が高い為、熱を加えても毒を分解する事が出来ません。
ニセクロナマコとクロナマコの違い
ニセクロナマコと似たナマコの種類として挙げられるのがクロナマコです。
水中に居る場合見分け方が難しい場合も有りますが、身体の特徴には明らかに違いが有る事が判ります。
先ず水の外から見分ける簡単な方法が、白く砂を被った様に見える場合はクロナマコ、ニセクロナマコは基本的に砂を被る様な習性を持っていないので、水の外から見てもはっきりとした黒に見えます。
次に実際に手に取って見た場合、クロナマコは身体の表面がツルツルしているのに対し、ニセクロナマコは身体の表面がイボイボしているのですぐに判別する事が出来ます。
又、クロナマコは身体が硬く身が締まっている様に感じられますが、ニセクロナマコの身体はとても柔らかく手に持った感触でも見分ける事が出来ます。
更にクロナマコとニセクロナマコの違いとしては、ニセクロナマコの場合、身体を突いたりする事で肛門部分からキュビェ器官と呼ばれるネバネバした白い糸状の物を出す事です。
このキュビェ器官は天敵等に襲われた時に出す物で、天敵に纏わりつく事で身を守る役割を持っております。
一度身体から出されてしまったキュビェ器官は体内で再生する事が可能で、何度でも体外に放出する事が出来ます。
ニセクロナマコは食用に出来ない
ニセクロナマコはホロツリンと呼ばれる毒が強い為、私達人間の食用には適しておりません。
ナマコの多くは私達の食用としても流通しており、特に内臓部分を使った「このわた」は、内臓部分を塩漬けし塩辛にした物で、日本では三大珍味の一つとしてお酒のつまみやご飯のお伴として人気が有ります。
しかし、残念ですがニセクロナマコは食べる事は出来ませんので注意しておきましょう。
一方、海外ではこのニセクロナマコの毒を利用した漁が行われている地域も有り、ニセクロナマコの身体を細かく刻み、潮だまり等に投げ入れる事で、その毒で潮だまりに住んでいる魚を仮死状態にして捕る事が出来ます。
まとめ
ニセクロナマコは、食用にもなるクロナマコとは異なり、その見た目も去る事ながら毒を持っている為食べる事は出来ません。
又、体長が20cmから30cmにも成長する為、大量発生した場合ナマコ嫌いの方にとっては海に入る事さえ拒否反応を示す場合も有ります。
但し、身体を突かれる事で身体からキュビェ器官を出す等特徴的な部分を持つナマコですので、潮だまり等で見掛けたら試して見ても面白い生物であると考えます。