皆さんはハイイロアザラシという動物をご存知でしょうか?
ハイイロアザラシは北大西洋に分布しているアザラシの仲間で、太平洋では通常見られません。
そのため、日本では馴染みの薄いアザラシですが、ヨーロッパや北米東海岸ではとても一般的なアザラシと言えるでしょう。
今回は、そんなハイイロアザラシの生態や特徴、会える水族館についてご紹介いたします。
ハイイロアザラシの基本情報
学名 | Halichoerus grypus |
英名 | Gray Seal |
分類 | ネコ目(食肉目)アシカ亜目アザラシ科ハイイロアザラシ属 |
分布・生息域 | 北大西洋 |
大きさ | 雄:体長2.5m~3.3m体重最大300kg、雌:体長1.6m~2m体重100~150kg |
ハイイロアザラシは一部地域で毛皮目的の狩猟が行われていますが、海洋動物が手厚く保護されているアメリカの沿岸などではむしろ個体数が増加傾向にあります。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでも、ハイイロアザラシが絶滅する恐れは小さいと評価されていて、カナダでは増えすぎたハイイロアザラシの駆除の要望も出されていますが、未だに実行はされていません。
分類
ハイイロアザラシ(Halichoerus grypus)は食肉目アシカ亜目アザラシ科ハイイロアザラシ属に属する海洋動物です。
食肉目はネコ科やイヌ科など、捕食者に特化した動物からなるグループです。
アザラシ科はアシカ科、セイウチ科と共にアシカ亜目(鰭脚類とも)を構成しており、クマ科と近縁であることが判明しています。
クマ類との共通祖先のうち、海での暮らしに適応する形に進化したグループと言えるでしょう。
アザラシ科は世界で10属19種が知られていて、ハイイロアザラシ属はハイイロアザラシ1種のみからなります。
特徴
ハイイロアザラシは、雄が体長2.5mから3.3m、体重最大300kgで、雌が体長1.6mから2m、体重100~150kgとなり、雄の方が大きくなります。
アザラシ科の中では中型の大きさと言えるでしょう。
体型は首が短く、ずんぐりとしている上、四肢の5本指の間には水かきが発達して鰭と化している、典型的なアザラシ科の形態を示しています。
ハイイロアザラシの体色は個体によって変化が大きいものの、基本的には灰色から黒色の地に、白灰色や茶灰色の斑が全身に点在しています。
また、雄より雌の方が毛色が濃い傾向が見られるのも特徴です。
産まれたばかりの仔アザラシは、密集した柔らかな白い毛に覆われているため、全身真っ白です。
心が通じた瞬間。ダイバーの手をギュっと握りしめるハイイロアザラシ↓
生態
ハイイロアザラシは北大西洋の東西両側に分布しています。
東側のヨーロッパでは、スカンジナビア半島周辺からバルト海、北海、ブリテン諸島、アイスランドにかけて見られ、西側の北米東海岸ではカナダのニューファンドランド島周辺からアメリカのバージニア州沿岸までで見られるアザラシです。
2006年には日本の秋田県でハイイロアザラシの幼体が観察されましたが、通常太平洋には現れない種であるため、迷入個体であったと考えられます。
ハイイロアザラシは沿岸性で、繁殖期に特定の営巣地(コロニー)に集まり、それ以外の時期には沿岸の岩礁海岸や小島を棲みかとし、浜辺で休息している姿がよく見られます。
食性については、タラ類などの魚を主に捕食していると長年考えられていましたが、近年の目撃報告や解剖結果から、ネズミイルカやゼニガタアザラシ、海鳥類などより大きな生物を捕食していることが明らかになってきています。
これほど大きな生物を襲う例としては、同じアザラシ科では他に、南極大陸周辺に分布しているヒョウアザラシが知られているぐらいです。
繁殖期になると、ハイイロアザラシは営巣地に集まって縄張りを形成しますが、それほど激しい争いは起こしません。
出産は東大西洋で秋に行われるのに対して、西大西洋では冬に行われるという違いがあります。
産まれた直後は白く貧弱な体躯の仔アザラシですが、母親の濃厚な母乳を飲むことで休息に成長し、生後1ヶ月ほどで毛が生え変わって、大人と同じ撥水性の密集した灰色の毛に覆われます。
そして自ら餌を求めて海に入るようになるのです。
会える水族館は?
ハイイロアザラシは欧米では一般的なアザラシとして多くの動物園水族館で飼育されているものの、分布域から遠く離れた日本の動物園水族館での飼育例は少ないアザラシです。
日本動物園水族館協会のデータベースによると2019年時点で、
・大分マリーンパレス水族館うみたまご
・鳥羽水族館
・八景島シーパラダイス
の3ヶ所の水族館でのみ飼育されています。
八景島シーパラダイスでは2007年に、国内で初めてハイイロアザラシの繁殖に成功しました。
まとめ
つぶらな瞳と愛嬌のある仕草がとても可愛らしいハイイロアザラシ。
しかし、その見た目からは想像もつかないほど獰猛な一面を持ち合わせ、イルカの仲間や他の種類のアザラシを襲っていると言うのですから、興味の尽きない動物です。
日本で見られる場所は限られていますが、もし水族館でご覧になる機会がございましたら、その見た目とのギャップを思い起こしてみてはどうでしょうか?