今回は、ヒブダイの生態や特徴についてご紹介させていただきます。
目次
ヒブダイの基本情報
学名 | Scarus ghobban |
英名 | Blue-barred parrotfish |
分類 | スズキ目ブダイ科アオブダイ属 |
分布・生息域 | 駿河湾以南、太平洋、インド洋 |
大きさ | 40~60cmほど |
ヒブダイはスズキ目ブダイ科の魚で、昔は大きく成長したオスの老魚をキスジブダイと呼び別の種類として分類していました。
体長は通常40~60cm、大きい物だと80cmにまで成長する大型の魚で、沖縄の貝塚からこのブダイの仲間の咽頭歯が出土するなど古代から大変親しまれている魚です。
ヒブダイが生息する海域と場所
太平洋~インド洋等の温かい海域(ハワイ・イースター島周辺の海域は除く)で広く分布していて、日本周辺では駿河湾・紀伊半島沖から南の海域に鹿児島・沖縄の暖流域のサンゴ礁や岩礁を住処にしています。
成長したオスは基本的に単独で岩礁を中心に暮らしていますが、メスや幼魚時代は内湾やマングローブの生えた汽水域(海水と川から流れた淡水が交じり合った場所)で群れを作って生活しています。
ヒブダイの芸術的な体色
ヒブダイはオス・メスの身体の色や模様の差が大きく雌雄の見分けがつきやすい魚ですが、死んでしまうとあっという間に体色の鮮やかさが褪せてしまう為、状態によっては判別が難しく、成長過程で模様や色も多様に変化していくと言われています。
オスの身体の色は特に美しく、ターコイズブルー(青緑色)にピンク色の縁取りがされた、とてもポップなカラーリングの鱗を持っています。
背中側が濃い青緑色のグラデーションになっていて、背びれや尾びれも同じように美しい色をしています。
メスは全体的に黄色を帯びていて、身体の側面に鞍状に青い模様がかかり、唇や目の周辺にも筋状の青い模様が目立ちます。
オウムのような顔
ヒブダイの愛嬌のある顔のチャームポイントはその口元です。
歯板(しばん・歯が融合して大きな板状になった物)を半分ほど唇が覆っていてオウムのくちばしのように見える事から、別名パロットフィッシュとも呼ばれています。
そのくちばしは他の魚のように突き出すことはできず固定されています。
サンゴ礁を守り育てる魚
ブダイ類は近しい種類関係にある肉食性のベラ類の魚とは異なり概ね草食です。
稀にカニや貝類も食べる個体もいますが、普段はサンゴ礁の死滅した部分に付着した海藻などの藻類を硬いくちばし状の歯板を使いついばむ様に削り取って食べています。
胃を持たずに咽頭歯が発達している為、死滅したサンゴと藻類を同時に口の中に入れすり潰して分別、効率よく藻類のみを体に取り込んで栄養にします。
その量は年間1匹あたり約1トンと物凄い量の死滅したサンゴを削り取って食べています。
ブダイ類たちのこの食事法のおかげでサンゴは死滅した部分を速やかに除去できるので、新しくサンゴの芽を出し株の更新がスムーズに出来ていると考えられています。
海中に吐き出されたサンゴの粉はそのまま白い砂となっているので、砂の補給にも一役買っていると言われています。
ブダイの仲間はただ当たり前に食事をしているだけでしょうが、サンゴ礁の生態系を守る重要な役割を持つまさに共存共栄の素晴らしい関係ですね。
綺麗な色の魚なのに美味しい!
ヒブダイは、南国の海に泳いでるカラフルな色の魚の代表格と言える美しい魚ですが、このヒブダイなんと食用できる魚なのです。
沖縄では「アーガイ」と呼ばれ、地元の方達に昔からブダイの中でも特に美味しい高級魚として珍重されています。
鮮魚を扱う市場や飲食店等でも見掛けることができ、南国ならではの味として観光客にも人気の有る魚です。
旬は磯臭さが抜ける冬場が一番美味しく、刺身は勿論、唐揚げ・煮つけにしても白身で上品・淡白な味が好まれています。
神秘的な生態を持っている魚
ブダイの仲間の生態で、とても興味深い事がもう一つあります。
それは途中で性別を変えることが出来るという事です。
ブダイ類は1匹のオスに複数のメスが所属するハーレムを形成する魚として知られています。
そして、そのハーレムの主であるオスが居なくなってしまった場合は、大きく成長したメスの個体が性転換をしてオスになる(雌性先熟)という不思議な生態を持っている神秘的な魚です。
中には生まれた時からメスではなくオスで生きる(一次雄)の個体もいます。
まとめ
ヒブダイ(アーガイ)は、いかにも南国の魚という魅力的な色を持つ魚ですが、ダイビングで海に潜ったり水族館で鑑賞する他に美味しい魚として有名です。
沖縄の魚料理を出すお店では様々な形でアーガイを楽しむことが出来ます。
加熱調理しても身が硬くならず、皮目の部分に旨味があるので皮目を付けた料理がおすすめです。