皆さんはナンヨウツバメウオという魚をご存知でしょうか?
ナンヨウツバメウオはツバメウオの仲間で、いかにも熱帯魚という姿形をした魚ですが、同時に幼魚が親とは似ても似つかないユニークな姿をしていることで知られる魚です。
今回は、ナンヨウツバメウオの特徴や生態についてご紹介いたします。
ナンヨウツバメウオの基本情報
学名 | Platax orbicularis |
英名 | Orbicular batfish |
分類 | スズキ目マンジュウダイ科ツバメウオ属 |
分布・生息域 | 岩手県以南、中・西部太平洋、インド洋の熱帯海域 |
大きさ | 50cm程 |
分類
ナンヨウツバメウオ(Platax orbicularis)はスズキ目マンジュウダイ科ツバメウオ属の海水魚です。
ツバメウオ属は今までに5種類が記載されており、いずれもインド洋から中・西部太平洋の熱帯海域に分布。
日本からはPlatax batavianus種(和名なし)を除くツバメウオ、アカククリ、ミカヅキツバメウオ、そしてナンヨウツバメウオの4種が報告されています。
いずれの種も、成魚と幼魚で形態が大きく異なるという特徴を持っています。
特徴
ナンヨウツバメウオの体長は最大60cmに達し、左右に平たく側扁した、円盤状の体型を持ちます。
高い体高に加えて、背鰭と臀鰭が後方へ発達し、吻が尖り気味なことが特徴です。
体色は銀白色で、体側面に黒色の横帯が二本が走っています。
同属のツバメウオと一見よく似ているものの、腹部に黒班がないことで区別ができます。
ミカヅキツバメウオとも似ていますが、ナンヨウツバメウオに比べると、吻の突き出しで控え目で、体側面の黒い小さな班も見られません。
以上述べてきたことはナンヨウツバメウオの成魚の形態的特徴ですが、幼魚の姿形は全く異なります。
幼魚は全身が赤褐色で、背鰭と臀鰭が成魚のものとは比べものにならないほど上下に幅広く伸びます。
また尾鰭が無色透明で、眼を通る黒色横帯一本だけがはっきりと認められるのが特徴です。
幼魚のこのユニークな姿は、波に漂う枯れ葉に擬態するためだと考えられます。
生態
ナンヨウツバメウオはインド洋から中・西部太平洋の熱帯海域に広く分布している魚で、東は南太平洋のポリネシアから西は紅海や東アフリカ沿岸までで報告があります。
日本では成魚は琉球列島以外であまり見られませんが、幼魚は太平洋側では岩手県以南、日本海側では富山県以南の各地で見られます。
日本はナンヨウツバメウオの分布域の北限に当たるようです。
ナンヨウツバメウオが生息するのは、沿岸の浅い海のサンゴ礁で、成魚はやや沖合の中層付近を好んで群れを形成します。
一方の幼魚は、その独特の姿形を活かして枯れ葉に擬態しながに漂流移動をし、漁港や内湾の波打ち際にも流れ着きます。
このような親と子での生息環境の違いから、もっぱら幼魚の方が人の目に触れやすくなります。
ナンヨウツバメウオの食性は雑食性で、エビやカニのような甲殻類や、貝のような軟体動物から、藻類まで食べてしまいます。
ナンヨウツバメウオを観たい時は?
ナンヨウツバメウオは日本では、琉球列島以外で成魚があまり見られないこともあって、食用に供されることが少ない魚です。
しかし、熱帯域の国々では、食用魚として一般的に食されています。
また幼魚はそのユニークな姿に加え、枯れ葉が舞うようにヒラヒラと泳ぐ姿が可愛らしいということで観賞魚としても人気があります。
ただし、ナンヨウツバメウオは成長が早い大型魚であることから、個人での終生飼育は難しいでしょう。
大きく成長した成魚も水族館では飼育展示されています。
日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年の時点で、ナンヨウツバメウオを飼育しているのは沖縄美ら海水族館、串本海中公園、八景島シーパラダイス、アクアマリンふくしまなど、全国の22ヶ所の水族館。水族館ではよく飼育される魚と言えそうです。
まとめ
ナンヨウツバメウオは、スズキ目マンジュゥダイ科ツバメウオ属の海水魚です。
大きな円形の銀白色の体に、二本の黒い縞が入るいかにも熱帯魚らしい成魚の姿と、枯れ葉そっくりの姿で波間に漂う可愛らしくユニークな幼魚の姿と、成長段階で全く異なる二つの姿を持ち合わせた魚です。
成長段階でこれほどまでに姿形を変える魚は珍しく、どのような進化をたどってきたのか興味が尽きません。
多くの水族館で飼育されている魚ですので、一度お近くの水族館へ足を運んでこの不思議な魚をご覧になってはいかがでしょうか?