皆さんはフウライチョウチョウウオという魚をご存知でしょうか?
鮮やかな色彩の美しい姿を持つことで知られるチョウチョウウオ類ですが、その中でもフウライチョウチョウウオは数が多く、日本近海でもよく見られる魚です。
今回は、そんなフウライチョウチョウウオの特徴や生態についてご紹介いたします。
フウライチョウチョウウオの基本情報
学名 | Chaetodon vagabundus |
英名 | Vagabond butterflyfish |
分類 | スズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属 |
分布・生息域 | 房総半島以南、太平洋、インド洋 |
大きさ | 20cm程 |
分類
フウライチョウチョウウオ(Chaetodon vagabundus)はスズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属の海水魚です。
チョウチョウウオ属はおよそ88種が知られている大きなグループで、黄色を基調とした綺麗な模様で知られています。
フウライチョウチョウウオはその中でも代表的な種が多く属するRabdophorus亜属に含まれています。
特に東部インド洋から東南アジアにかけての海域に分布するChaetodon decussatus(和名なし、英名インディアンバガボンドバタフライフィッシュ)種は近縁で、姿形もよく似ています。
特徴
フウライチョウチョウウオの体長は20cm程度で、最大23cmに達した個体の記録があります。
フウライチョウチョウウオは左右に平たく側扁した楕円形の体型に、体高が高く、口が小さいという、チョウチョウウオ科の魚全般に共通する特徴を持ちます。
背鰭から尾鰭、尻鰭にかけての後ろ側は丸みを帯びていて黒く縁取られます。
フウライチョウチョウウオの体色は白色ですが、尾鰭、背鰭、尻鰭は黄色です。
そして、頭部と体の一番後ろの尾鰭の基底部、そして尾鰭の真ん中にはっきりとした黒色の横帯があります。
また体側面全体には細い暗褐色の帯がたくさん走っています。
一見してニセフウライチョウチョウウオによく似ていますが、フウライチョウチョウウオの体側面の細い帯が斜めなのに対して、ニセフウライチョウチョウウオの体側面の帯ははっきりとした横帯なので判別できます。
生態
フウライチョウチョウウオはインド洋から中・西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に広く分布している魚で、西は東アフリカ沿岸から、東はポリネシアまで、北は南日本沿岸から、南はロードハウ島までで知られています。
国内では房総半島以南の太平洋側や琉球列島で見られます。
ただし、本州沿岸で見られるのはほとんどが黒潮に乗って迷い込んだ幼魚で、冬季には水温の低下で死んでしまう死滅回遊魚です。
フウライチョウチョウウオが好む生息環境は水深5~30mの浅い海のサンゴ礁や岩礁ですが、幼魚は潮間帯の潮だまりにもよく進入します。
単独かペアで行動することが多いですが、同じチョウチョウウオ科の他種と混群を形成することもあります。
フウライチョウチョウウオの餌は藻類から、サンゴのポリプや小型の甲殻類ような底生の小動物までと幅広く、雑食性です。
フウライチョウチョウウオのペアは、一定の範囲の縄張りを共同で守る行動が観察されています。
観賞魚としてのフウライチョウチョウウオ
フウライチョウチョウウオはごく稀に食用とされることもあるようですが、通常は個体数が多い沖縄でも食べられることはなく、市場に流通することはありません。
釣り上げられても、捨てられるかリリースされることがほとんどです。
一方で、チョウチョウウオの仲間でも個体数が多く、雑食性で丈夫なフウライチョウチョウウオは観賞魚として安定した人気を得ています。
幼魚は本州沿岸に死滅回遊魚として来遊するため、自家採集の対象になることも多い魚です。
ただし、チョウチョウウオの仲間としては大型で気性が荒いため、他種との混合飼育には注意を要します。
水族館でも飼育展示されることも多く、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年の時点で、沖縄美ら海水族館、海遊館、サンシャイン水族館、鴨川シーワールドなど、全国の19ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
フウライチョウチョウウオは、スズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属の海水魚です。
チョウチョウウオの仲間としては、一般的な種であるフウライチョウチョウウオは水族館でよく飼育されています。
また、沖縄のサンゴ礁に潜れば普通種であり、本州の沿岸でも幼魚が磯の潮だまりなどでよく見られることから、日本人にとっては身近なチョウチョウウオと言えますね。
いずれも他種のチョウチョウウオ類と一緒にいることが多く、色彩や姿形を比較するのにちょうどよい種と言えるので、ご覧になる機会に恵まれましたら、じっくりと見比べながら観察されてみてはいかがでしょうか?