皆さんはシラヒゲウニという生物をご存知でしょうか?
日本の本土ではあまり馴染みのない名前のウニですが、沖縄では食用のウニと言えばこのシラヒゲウニを指すほど一般的で、海岸へ行けば容易に見つけられる種類です。
今回は、そんなシラヒゲウニの生態や特徴についてご紹介いたします。
シラヒゲウニの基本情報
学名 | Tripneustes gratilla |
英名 | Collector urchin |
分類 | ホンウニ目ラッパウニ科シラヒゲウニ属 |
分布・生息域 | 紀伊半島以南 / インド洋、中・西部太平洋 |
大きさ | 約10cm |
分類
シラヒゲウニ(Tripneustes gratilla)は棘皮動物門ウニ綱ホンウニ目ラッパウニ科シラヒゲウニ属に属する海洋生物です。
ウニ綱は潮間帯から深海底まで、世界中の海からおよそ870種が知られています。
その中でもホンウニ目は、球状の胴体に長く鋭い棘を多数持つ、まるで栗のいがのような姿をした、典型的なウニの形態を持つ種類が多く含まれており、食用として有名なムラサキウニやバフンウニも、ホンウニ目に属しています。
そのうち、熱帯海域に適応したシラヒゲウニ属は4種が知られており、また化石記録から多くの絶滅種の存在も明らかになっています。
特徴
シラヒゲウニの殻径は約10cm、殻高は約6cmに達します。
殻はやや丸みを帯びた五角形で、下の口側が平らである一方、上の反口側は円錐形です。
殻の表面に棘のない、黒色の裸状部分が十縦列あるのが特徴。
管足は有孔部に三縦列に並んでいて、大棘は四縦列で、太く短めです。
シラヒゲウニの体色は、棘のない黒色の裸状部分を除けば、棘の色である白色あるいは赤褐色となります。
個体によって、全体が白色のもの、あるいは赤褐色のもの、二色が入り混じったものなど、様々です。
生態
シラヒゲウニはインド洋から中・西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、西は東アフリカから東はハワイ諸島まで、北は南日本及び朝鮮半島南部から南はオーストラリアとニュージーランドまでで知られており、ガラパゴス諸島からも記録があります。
国内では紀伊半島以南の太平洋側や九州から琉球列島にかけて見られ、特に沖縄では普通種です。
シラヒゲウニは潮間帯から潮下帯の浅い海に生息しており、潮だまりやラグーンの砂質の海底でもよく見られます。
シラヒゲウニの餌は海藻で、様々な種類の海藻を食べていることが判明しています。
シラヒゲウニは体表に小石やサンゴ片、貝殻などを載せながら、海底を這う習性があります。
これは天敵の目をごまかすためのカモフラージュの一種と言えるでしょう。
シラヒゲウニの繁殖期は夏で、日本近海では7月上旬から8月にかけて産卵することが知られています。
人との関わり
日本本土では、個体数が少ないこともあって、あまり馴染みのないシラヒゲウニですが、沖縄では沿岸で最も一般的なウニであり、大型種ということもあって、食用ウニとして水産上の重要な位置を占めています。
主に、繁殖期で生殖腺が発達する夏が漁獲期です。
沖縄県栽培漁業センターでは、種苗の人工生産も行っており、シラヒゲウニの漁獲量を増やすための研究が続けられています。
しかし、シラヒゲウニは同じラッパウニ科に属するラッパウニと同様、又棘に毒があるため、取り扱いには注意が必要です。
被害事例は少ないですが、刺されると赤く腫れて痛みます。
シラヒゲウニはアクアリストの間で飼育されることもありますが、鑑賞用というよりは、コケや海藻を餌とする食性を活かした、水槽の掃除屋としての役割が期待されることが多いようです。
最後に
ムラサキウニやバフンウニと比べると、日本本土では馴染みの薄いシラヒゲウニ。
しかし、近年の地球温暖化で、南方系のこのウニは、本土沿岸でも数を増やしつつあり、今後流通量が増える可能性もあります。
大型の食用ウニとして、今後注目の的になるかも知れません。