皆さんはセミホウボウという魚をご存知でしょうか?
セミホウボウは綺麗な模様を持った魚で、とても大きく発達した胸鰭を、まるで扇のように左右に広げて海中を遊泳する魚です。
その泳ぐさまは、まるで空を飛んでいるのかと錯覚するほどです。
今回は、そんな華麗なセミホウボウの特徴や生態についてご紹介いたします。
セミホウボウの基本情報
学名 | Dactylopteridae |
英名 | Oriental flying gurnardsem |
分類 | カサゴ目セミホウボウ科セミホウボウ属 |
分布・生息域 | 渡島半島以南、インド洋、中・西部太平洋の熱帯・亜熱帯海域 |
大きさ | 20cm程 |
分類
セミホウボウ(Dactyloptena orientalis)はカサゴ目セミホウボウ科セミホウボウ属に属する海水魚です。
セミホウボウ科は西部太平洋からインド洋、そして大西洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布するグループで、これまでに2属7種が知られています。
主に砂泥底に生息する底生魚で、非常に大きく発達する胸鰭を広げて、海底直上を滑空するように泳ぐのが特徴。
セミホウボウ科は形態上の特徴から、カサゴ目に分類されることが多いのですが、異論も多く、独立したセミホウボウ目として扱う研究者もいます。
また、スズキ目キツネアマダイ科と類縁関係にあるとして、スズキ目に含めるべきだとの主張もあり、分類上の位置が不安定なグループと言えるでしょう。
ちなみに名前も姿形もよく似ているホウボウ科とは、同じカサゴ目に分類されることが多いとはいえ、かなり離れた系統にあると考えられています。
特徴
セミホウボウの体長は通常20cm程度ですが、最大で40cmに達した記録があります。
体型はやや縦扁していて、特に大きな頭部は硬い骨板で覆われているのが特徴。
後頭部には長く発達した頸棘が生え、非常に大きな胸鰭は扇のように左右へ広がり、後端が尾鰭に届くほどです。
セミホウボウの体色は淡い灰褐色ですが、やや赤みを帯びており、特に頭部で赤みが強くなります。
また、黒っぽい斑点が鰭を含めた全身に散在していて、特に大きく広げた胸鰭には、目玉模様のような大きな黒い斑紋が一際目を引きます。
この目玉模様は、大きな生物であるかのように見せかけることで、捕食者を驚かせる効果があるのではないかと考えられているようです。
実際、天敵に出会ったり、危険を感じたりしたセミホウボウがこの胸鰭を大きく広げて威嚇する様子が観察されています。
生態
セミホウボウはインド洋から中・西部太平洋にかけての熱帯・亜熱帯海域に広く分布している魚で、西は東アフリカや紅海から東はハワイ諸島、ポリネシアまで、北は南日本から南はオーストラリアやニュージーランドまでで知られています。
国内では渡島半島以南の太平洋側、新潟県以南の日本海、東シナ海沿岸、琉球列島や小笠原諸島で見られます。
セミホウボウは水深1~100mまでの様々な水深の砂泥底に生息しており、特に大陸棚の海底でよく見られる魚です。
餌は底生の無脊椎動物や小魚が中心で、特に小さなエビやカニなどの甲殻類を好んで捕食します。
海底で大きな胸鰭を使って滑空するように移動し、砂底に隠れている獲物を探し出す姿が観察されています。
人気だけど飼いにくい
名前や姿形がよく似たホウボウが美味な食用魚として知られているのに対して、セミホウボウはあまり美味しくない魚とされています。
釣り上げられた際などに食べられることはあっても、歩留まりが悪い上に味の評価が低いためか、市場で本格的に流通することはありません。
一方で、その華麗な外見からセミホウボウはダイバーには人気の高い魚で、海底を颯爽と滑空するかのように遊泳する姿が喜ばれます。
綺麗な模様と特異な形態は、観賞魚としても重宝されそうなものですが、セミホウボウは性格が神経質で他種・他個体との混泳が難しく、餌付きにくい個体も多いようです。
多くのアクアリストが手を焼かされており、飼いにくい魚と言えるでしょう。
セミホウボウは水族館でも飼育展示されており、日本動物園水族館協会のデータベースによると2018年現在、沖縄美ら海水族館、串本海中公園、鳥羽水族館、鴨川シーワールドなど、全国の7ヶ所の水族館で飼育されています。
まとめ
セミホウボウは、カサゴ目セミホウボウ科セミホウボウ属に属する海水魚です。
セミホウボウは一般に食べられることがなく、飼育しているアクアリストも珍しく、水族館でも飼育しているところはそれほど多くないとあって、なかなか出会うのが難しい魚かも知れません。
しかし、大きな胸鰭を広げてあたかもグライダーが滑空するかのように泳ぐ姿は華麗で、見る者に鮮烈な印象を与えます。
もしセミホウボウを見るチャンスに恵まれましたら、是非その華やかな姿を目に焼き付けてみてください。